政治家もマスコミも「身体検査」を

脱力感に襲われるニュースばかりだ。
中川昭一財務相は単に泥酔していただけなのに、「酒は飲んでいなかった」などと見え透いたウソをつくから、もう目も当てられなくなる。
「風邪薬でご迷惑をかけました」と麻生総理に報告したら、総理は、「早く風邪を治すように」と言ったという。こんな漫画のような事が本当に起きているのか。信じたくない。
中川氏は、G7をここ一番の勝負所だとは思わなかったらしい。きのうの「産経抄」には笑った。
《米ツアーという晴れ舞台に臨んでいる男子ゴルフの石川遼選手(17)は、カリフォルニアに向かう機中の11時間、一睡もできなかったそうだ。それでも時差ボケ防止のために、到着するとすぐに練習を開始した。遼君を見習えとは言わないが、ろれつの回らない政治が続くかぎり、景気の回復はおぼつかない。》
政治家だけではない。マスコミも問題だ。あの日、中川大臣は記者と会食して、その場でも酒が出たという。記者は彼が酒を飲んでいたことを見ていたようだし、そうでなくとも、そばに行けば酒の匂いがしたはずだ。そのことをなぜ、すぐに暴露しないのだろう。
だいたい、麻生太郎氏も、中川昭一氏も、こんな体たらくになったことにはマスコミの責任もある。両者ともはじめから大臣の器ではなかったのだと思うがそのことをマスコミは取材、報道していない。総理になるときにはヨイショしていたマスコミが、いま得意げに麻生叩きをしているのは納得できない。
アメリカ大統領選挙では、予備選から数ヶ月間にわたって、候補者の信条、政策、家族、友人・ロビイストとの関係、異性スキャンダルなどあらゆる面にわたり調べられ、報道されるという。重要な問題に関する政策の変化、政治姿勢の揺れなどは特に細かくチェックされる。それに対して、日本のメディアは、政治家の経歴、信条、政策をきちんと報じないから、国民は漠然としたイメージで選ぶことになる。
このブログで、麻生氏が学歴詐称まがいのことをしていたことをかつて書いたが(http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080915/)、新聞やテレビはこういう問題を報じない。誰であれ、総理になる前には、マスコミがきちんと「身体検査」しておくべきだと思う。

さらに言えば、マスコミ自身に「身体検査」の必要がある。
去年から大騒ぎになっている後期高齢者医療制度は、06年6月に、医療制度改革法として可決されていた。それなのに、当時マスコミはきちんと警鐘を鳴らさなかったと、去年6月のブログで書いた。
同様に、派遣法が制定され、派遣対象業種がどんどん拡大していった過程でも、やはりマスコミは社会の木鐸としての役割を果たしてこなかったようだ。
週刊現代』に「新聞の通信簿」というコーナーがある。毎回違ったテーマで6紙に点数をつけるリレー連載だ。2月28日号はジャーナリストの青木理(おさむ)氏の担当だったが、まず点数にびっくりした。「読売」、「朝日」、「産経」、「日経」の4紙がなんと0点!「毎日」が80点で「東京」が60点だった。テーマは労働者派遣法。青木氏は、派遣切りの「元凶」は製造業にまで派遣を認めた04年にあるとする。
いま、野党だけでなく舛添厚労相まで製造業派遣は問題だと言っており、各新聞も禁止する法改正が必要だと主張している。
では、「同法改正時に各紙はどのように報じたのか」が今週の通信簿なのである。これは面白い。青木氏は「当時の世情が規制緩和ムードに覆われていたせいもあろうが、各紙とも問題意識が恐ろしく希薄で、法案の影響を深く洞察して伝えた記事がほとんど見当たらない」と書く。
「毎日」だけは社説で「安易に製造業への派遣解禁を行なうべきではない」と主張していたという。
もっとさかのぼって、85年の派遣法制定のときのマスコミの報じ方はどうだったのか。その通信簿も見たいものだ。