テレビ制作「着手金」で成果

サンプロで1日と8日に放送した特集「派遣法誕生」は、ジン・ネットのホームページにいつもよりたくさんの感想、意見が寄せられた。法律制定過程のけっこう難しい「勉強」が続くVTRだったが視聴率もよかった。
寄せられた意見のなかに、テレビ界でも派遣は問題になっているはずだと指摘するものがあった。たしかにテレビ局には、正社員以外にたくさんのスタッフが働いていて、派遣も相当数になる。
テレビ業界が超格差社会であることは、このブログでも書いたことがある。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080119 同じディレクターでも、高給の正社員とその数分の一の年収しかない派遣で働く人が局内で机を並べている。AD(アシスタント・ディレクター)の多くは派遣の人たちだ。ちゃんとしたプロダクションは「常用雇用」して派遣するが、ひどいところもあるという。テレビ局向け派遣をもっぱらにする会社の中には、局から入る給与分の49%を抜くところもあるという。本人には半分しか入らないわけである。さらに、二重派遣で、二つの派遣会社から抜かれ、10万円未満の月給で厳しいAD業務を続けている人もいると聞く。
最近、テレビ局が業績不振で、派遣を切る動きがあると噂されている。事情通によれば、在京テレビ局だけで、来年度の制作費カットは一千億円近くになる可能性があるという。これは我々のような制作会社をも直撃する。制作会社の連合体のATPでは、4月からはじまる制作費カットで2ヵ月後の6月に多くの制作会社が資金難に陥るという予測を立てている。ますます厳しい時代に入っていく。
そんななか制作会社を喜ばせる大きな成果があった。2月6日(金)、フジTVが「着手金」の支払いに応じると回答したのである。これはテレビ業界では大ニュースである。
制作会社の資金繰りを困難にする原因の一つが、テレビ局による後払い制度にある。例えば、取材開始から6ヶ月経って番組が放送された場合、テレビ局から制作会社に金が振り込まれるのは放送の1〜2ヶ月後になる。その間のおよそ8ヶ月間、旅費などの取材経費から人件費まで、制作会社が負担することになる。テレビ制作の場合、プロデューサー、ディレクター、アシスタント、撮影など多くのスタッフがかかわり、ポストプロダクションでは、編集、音効、ナレーターまで入ってくる。制作経費は制作会社に重くのしかかってくる。
こんな理不尽な慣行が長年まかり通ってきたのである。制作会社の経営難が深まるなか、これを何とかしなければと、ATPはテレビ局に「着手金」支払いの要請をした。https://www.atp.or.jp/modules/newsrelease/article.php?storyid=77 
これに応じると回答したのはNHKに続いてフジが2局目。これで他局からも同様の回答が来そうだ。
経営と生活を守る闘いが我々の業界でも行なわれている。