脱北者を受け入れる意味7―領事館留置き問題

いま脱北者の最大流出先はタイだ。
タイ在住の海老原智治さん(写真)が、7日の集会で報告したところによると、タイに逃げてきた脱北者の数は2年前に一年で1000人を突破、去年は1500人が流れこんだと推定されるという。またタイの入管収容所には現在、9月以降に脱北してきた約400人の脱北者(男性100人、女性300人、脱北者に女性が多い理由についてはいずれ書こう)が滞留しているという。
http://www.kuro-net.org/arnka/arnka121.html
海老原さんは、ジェンキンスさんの証言から判明した拉致被害者のタイ人、アノーチャさんの家族とともにタイでも拉致問題への関心を高めようと努力している。05年「北朝鮮に拉致された人々を救援する会チェンマイ」という団体を立ち上げ、タイ語拉致問題のパンフレットを出したりと地道な活動を続け、その活動はさらに脱北者問題をふくむ北朝鮮の人権問題全般へと広がっている。
来年1月には《元脱北者強制収容所体験者及びかつてタイに逃れた経験を有する元脱北者)を招聘した北朝鮮人権セミナーを、バンコク及び脱北者流入経路である北部タイで、主要大学2〜3カ所との共催により連続開催する予定です》とのこと。
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中朝国境から雲南省または広西チワン族自治区へ、そこからミャンマーラオスまたはベトナムへ、さらにカンボジア、タイへと流れる東南アジアルートは、かつてのロシア、モンゴルルートに替る主要脱出経路だ。
この移動の過程で、バスや列車、宿泊所で身分をチェックされるなどして、多くの脱北者が摘発され北朝鮮に送還されていった。人命にかかわるリスクにさらされながら長い距離を逃げて行かざるをえないのも、前回書いた「中国問題」ゆえだ。
中国からの圧力で、かつては、韓国大使館・領事館は脱北者を保護しなかった。さすがに韓国内で批判が起き、領事館内に保護するようになったが、こんどは中国が出国許可をなかなか出さない。すると、脱北者が領事館内に「滞留」してしまい満杯になってしまう。
【ソウル4日時事】韓国の柳明桓外交通商相は4日の国会答弁で、中国にある韓国大使館や総領事館で韓国入りを待つ北朝鮮からの脱出者が約70人に達していることを明らかにした。この中には韓国人拉致被害者朝鮮戦争時の韓国軍捕虜も含まれているという。柳外相は「できるだけ(中国での)滞在期間を縮めようとしている」と語った。(2008/11/04)
韓国の大使館・領事館に70人もの脱北者が「たまっている」というのだ。これでは新たな脱北者が領事館に接触しても、すぐには入れず、待たされることになる。自己責任で中国当局から身を隠して生き延びろということを意味する。これは危ないし費用もかかる。やはり第三国へ行こうということになる。
この事情は日本行きの脱北者も同じだ。最近、知り合いの脱北者の家族が何人か日本にやってきたが、領事館に留め置かれる期間は、半年はざらで、中には一年に及ぶ人もいる。原則、領事館からは出られないからその閉塞感は監獄に近いものがあろう。韓国の領事館ではストレスから乱闘騒ぎまで起きたという。
瀋陽の日本総領事館にはいくつかの部屋に計十数名が寝泊りできるというが、そのベッドが空かないと、次の人を受け入れられない。
だから、領事館に入るのをじりじりしながら数ヶ月も待っている脱北者がいるし、その情報が北朝鮮まで伝わって、川を越えるのをためらっている人まで出ている。
出国許可をいつ出すかは中国当局の胸先三寸。安倍政権のときには円滑に出たなどという話を聞くと、脱北者を外交のコマに使ってもいるようだ。
日本政府は中国政府に対して、脱北者を早期出国させるよう、また北朝鮮への送還をやめるよう強く申しいれるべきである。