北朝鮮の偽札は米国製?2

takase222008-11-19

北朝鮮の偽札「スーパーノート」を作っていたのはCIAだった》
このCIA自作自演説を検討する前に、そもそもスーパーノートとは何かを説明しておこう。スーパーノートとは、非常にレベルの高い偽ドル札のことだ。
アメリカで偽札を取り締まるシークレット・サービス(SS)は、89年マニラで発見されたものを第一号としている。SSといえば、大統領にぴったり寄り添うイヤホンとサングラスの男たちというイメージだが、もともとは南北戦争でものすごい量の偽札がはびこったのを処理するために戦争が終わった1865年にできた機関だ。南北戦争だけでなく、敵の経済を混乱させるため、戦争になると偽札がよく登場する。
89年以降発見された超精巧な偽ドル札は、その後これまでに、各地でさまざまな変種が発見され、大きく分けると4〜5種、細かく分類すれば数十種のバリエーションがある。スーパーノートというのは俗称で、SSはPN14342と呼ぶ。数字はマニラで見つかった札の記番号から取り、PNとはペアレント・ノートの頭文字で、一つの家族とみなして束ねた。つまりPN14342に属するグループ全体がスーパーノート・ファミリーというわけである。なぜ、「家族」かといえば、偏差、バリエーションはありつつも、すべてに同じ技術の痕跡、「クセ」(後で登場する松村喜秀さんの表現を使うと「DNA」)があるからだ。これは偽造者グループが同一と考えてよいということを意味する。
スーパーノートの存在が日本で知られるようになったのは、96年3月、ベトナムカンボジア国境で、70年北朝鮮に渡った赤軍派ハイジャック犯が、SSに偽ドル札容疑で拘束された事件からだった。このとき、メディアが北朝鮮の偽札「スーパーK」を取上げた。この名づけ親は、日本の偽札鑑別機メーカーの社長、松村喜秀(よしひで)さんで、北朝鮮製という意味を込めてKoreaのKを使った。
写真は、96年の「スーパーK事件」の取材記『スーパーKを追え』。
松村さんは2005年のニューズウィークの「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれた、知る人ぞ知る偽札研究の第一人者だ。独自の研究で「スーパーK」をはじく鑑別機を開発したのだが、そのあと、進化するスーパーノートとの闘いが繰り広げられる。松村さんは次々に登場する新手のスーパーノートと格闘し、特徴を見破っていった。これらをウルトラスーパー(96年)、スーパーM(2000年)、スーパーX(2002年)そして究極のスーパーZ(2004年)などと松村さんは命名している。
こう書くと、まるで漫画のようだが、私は96年以来の彼の闘いと進化する偽ドル札をこの目で見てきた。それは壮絶なバトルだった。
松村さんのブログにその一端が書かれてあるから、ぜひ読んでほしい。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ea/02/
(つづく)