Qちゃん引退で増田明美がコメント

takase222008-10-29

高橋尚子が引退を表明した。
サングラスを投げ捨ててスパートした、シドニー五輪女子マラソンでの、あのかっこいいシーンは今も眼にやきついている。そして「集中してすごく楽しい42キロでした」と言った笑顔も忘れられない。
誰でも何のためらいもなく応援したくなる、文句なしの国民的大スターだった。
引退会見での「台風の後、さわやかな風が吹いている」とは高橋尚子らしい。

朝のワイドショーで、引退について有森裕子増田明美がコメントしていた。ともに、かつては日本を代表するマラソンランナーである。
高橋尚子を評するとき、有森にはちょっと屈折した自意識がほの見える。言葉にではなく、表情に出てしまう。ごく普通の反応だから責められない。

一方、増田明美は全然違う。
《Qちゃんは、勝っても負けてもみんなが応援したくなる人だった。
「あきらめなければ夢はかなう」ということをQちゃんは身をもって教えてくれた。
走るなかで、私たちに人生までも考えさせてくれた、すばらしいランナーだった。》
と、こんなことをいつもの落ち着いた口調でコメントした。
そのとおり!と手を叩きたくなった。

読売新聞に載った増田のコメントはこうだ。
《Qちゃんがマラソンを明るくし、マラソンを社会的な存在にしてくれた。
あらゆる面で風穴を開け、スポーツ界に幸せをもたらしてくれた女神だった。》
彼女のコメントにはいつも感心させられる。

数年前、女子マラソンをテレビで観ていた。実況解説者が実にうまい。しゃべり過ぎず、選手の体調からレース駆け引きの心理まで、勘どころをしっかり押さえて解説している。何より気持がいいのは、それぞれの選手を誉めて励ましている雰囲気があることだ。その解説が増田明美だった。マラソンそのものより解説が聞きたくてずっと観てしまった。

「Qちゃん、長い間、ごくろうさまでした」と増田明美が言う表情には、心からの慰撫がこもっている。彼女ほどの素直な口ぶりと表情にはめったにお目にかかれない。人柄もとてもいい人なのではないかと想像する。
この人は、きっと自分を非常に客観的に観察することができるのだろう。あの素直さは、そこから来ているように思う。
「私は自分自身のことは客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです!」とどなったどこかの総理とは全然違う。