北朝鮮はそんなにすごいのか6

北朝鮮は食糧が足りないから援助がほしいはずだ。核は武器として開発しているのではなく、援助がほしいための取り引きのカードなのだ。」
こんなふうに北朝鮮を見ると大きく誤解し、予測を誤る。実は、かなりの専門家がこの誤解にはまっているのではないか。
将軍様は人民が飢えているかどうかには全く関心がない。
金正日は98年の「人工衛星」打ち上げに数億ドルを使ったと認め、「我が人民がまともに食べることもできず、他人のように良い生活ができないことを知りつつも、国家と民族の尊厳と運命を守り抜き、明日の富強祖国を建設するために、その部門に資金を振り向けた」と公言している。
三百万人の餓死者が出たとされる90年代の後半、北朝鮮は莫大な外貨を投入して核、ミサイルの開発に邁進していた。将軍様がコメや小麦などの餌に騙されて、核を手放すわけがないではないか。
北朝鮮の核をめぐる方針は、早く核兵器を小型化し、これを搭載できる長距離ミサイルを開発すること、そして核を保有した状態のまま、アメリカの制裁を解除させ、国交樹立までもっていくことだと思う。
この前提で交渉を見ていくと、北朝鮮の行動が理解しやすい。
民主国家では、外交とは少しづつ「積み上げる」ものとされ、一定期間「成果」が出なければ批判されて別のやり方に変わっていくことがよくある。多少なりとも「ぶれる」のは避けられない。
これに対して、北朝鮮の場合には、外交官たちは、上部が決めた大方針を徹底して追及しようとする。もし失敗して、将軍様の不興を買ったりすれば、一族が破滅することもありうるから必死である。大方針を貫徹するためなら、テーブルをひっくり返してもともとの出発点まで戻るのも平気だ。実際、今起っているのは6カ国協議の最初、もっと言うと93年の第一次核危機まで後戻りしかねない事態である。
北朝鮮を正確に理解すべき今、専門家の先生方の体たらくを、草葉の陰の玉城素先生は嘆いておられるのではないか。
《幽霊の正体見たり枯れ尾花》
人は、常識で判断しえないものに直面すると、しばしば畏怖の念にかられる。そして、専門家といわれる人々こそ、北朝鮮を怪物のように肥大化したイメージで見るきたのではないか。
もう一度、素直に北朝鮮の実像を見直していきたいと思う。