サンプロ「韓国騒乱」

サンプロで「緊急追跡 韓国騒乱〜急失速!経済大統領の危機」を放送。私がスタジオ出演した。番組の予告は以下。
李明博(イミョンバク)政権が発足して約5ヵ月。大規模デモが続く韓国が、今、大きく揺れている。去年12月の世論調査では、大統領の支持率は8割超。
35歳の若さでヒュンダイ建設の社長、46歳で会長に就任し、韓国の高度成長を牽引してきた手腕で、経済再生への国民の期待を一身に受けた李明博大統領だったが…
今年5月には支持率は1割台に急落。発足100日あまりで、李明博政権に一体何が起きたのか。支持率低下の原因は、日本で報道されているようにBSE問題を発端とした大規模デモだけなのか?
我々は、李明博大統領が直面する危機の真相を探るため、韓国へ飛んだ。そこで繰り広げられていたのは、メディアを巻き込んでの保守、左派勢力の死闘だった。》
私が初めて見た牛肉集会が、6月10日で、推定20万人という最大の規模となった。この日の日記(http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080610)を読み返すと、当時はまだ取材もしておらず、単純に「ソウルの高校生たちは何て行動的なんだ」と好意的に見ているのがわかる。
だが、その後取材をしてみると、BSEの恐怖は例を見ないほど広がった「都市伝説」となっており、その発生源はMBC(文化放送)の報道番組にあることがわかった。「PD手帳」という局の看板番組で、《韓国人は遺伝的に「狂牛病」にかかりやすいことがわかりました》とやったのだ。番組は続けて、科学論文を引用しながら《感染した牛肉を食べると、韓国人は94%が感染する》《韓国人はアメリカ人の3倍、イギリス人の2倍かかりやすい》とまで断定した。いろんな数値を出し一見科学的な装いがあり、これを観た人たちは衝撃を受けたに違いない。
ただ、冷静に考えると、万が一BSEに感染したものを食べたとしても、人間への感染可能性は非常に低い。《94%が感染》なんてありえない。
この裏づけとされた英文の論文を入手して読んでみた。韓国人のプリオン遺伝子のタイプについて初めて調査したという触れ込みの論文だ。
プリオン遺伝子のタイプにはMM、MV、VVがあり、過去のBSE感染者(vCJD)の人は全員がMM型だった。ここから、プリオン遺伝子のタイプとBSE感染には関係があるらしいことがわかる。一方、韓国人の遺伝子タイプは、MMタイプが圧倒的に多くMMが94%を占めている。日本人は93%、アメリカ人はMM型は3割強しかいない。
論文が言っているのは以上だ。ここからどうやって、韓国人が感染牛を食べると94%が感染するという報道になるのか、とても理解できない。意図的に誤った情報を流したとは思いたくないが、この大誤報を局はすぐに取り消さず、そのままにした。
この大間違いの報道が、ネットで一気に増殖、拡散していった。韓国は世界有数のインターネット大国で、ネットの影響力は日本よりはるかに大きい。その一方で、科学のリテラシーが高くない。パニックが発生するのに時間はかからなかった。
韓国が去年10月から輸入を止めていたアメリカ産牛肉の解禁を発表したのが4月18日、「PD手帳」の放送が4月29日、そして初めての高校生による牛肉解禁反対集会が放送三日後の5月2日だ。今でも多くの高校生たちが《韓国人9割超感染》説を信じている。
韓国を騒乱状態にした集会、デモには、国民がパニックになりやすい社会の「体質」を感じてしまう。韓国とつきあっていくうえで、知っておくべき事柄だと思うが、この「体質」はどこからくるのか。