毎日がデモのソウルより

takase222008-06-10

今ソウルに来ている。
さっきまで、夜の大集会とデモの取材をしていた。ソウルでは、ここ数年で最大の国民運動が行われている。
一ヶ月以上も連日、ほんとに毎日途切れることなく、集会・デモが行われている。李明博大統領が訪米したさい、BSE問題でこれまでストップしていた牛肉輸入の再会を約束したことに国民が怒っているのだ。脊髄や内臓などの危険部位も含む輸入解禁に、普段はデモなどしない若い人たちが立ち上がっている。どこかの政治勢力が炊きつけたのではなく、はじめは女子高校生を中心にした小さなデモがどんどん大きくなっていったという。
アメリカの牛肉は安いので、学校給食に使用されるだろう。また、韓国では塾に通う子が多く、夜も外食になると、そこでもアメリカ牛肉を食べることになる。生徒たちが危機感をもったのには、そんな事情もあったという。
集会では家族連れが多く小さな子どももいた。高校生、大学生(とくに女子が多い)が目に付く。学校帰りなのだろう、セーラー服の女子中学生も見た。携帯電話で互いに写真を撮り合ったり、会場のまわりには屋台が出たりと、お祭り気分も漂っている。みなローソクの入った紙コップを手にしている。夜がふけて闇に無数のローソクの灯りがともると、しだいに雰囲気が盛り上がっていく。(写真)
きょう6月10日は、87年に大統領直接選挙制導入へとつながった「6月抗争」の記念日で、集会は最大規模になるだろう。主宰者側は、韓国全土で100万人が集まると言っている。たしかにすごい人数だった。市庁舎前の広場は、2002年のワールドカップ以来の人数になるとも言われている。あまりに多すぎて全体を把握できないが、数万は確実にいた。明日の朝刊ではどのくらいの規模と報道されるのだろうか。
李明博政権は発足4ヶ月たらずで早くも政治危機に陥った。きょう、首相以下、閣僚全員が辞表を出したと言う。デモで内閣がつぶれようとしている。市民が声を挙げることで、確実に政治を動かしているのである。
たくさんの女子中高校生たちが、毎晩放課後にローソクデモで練り歩くというのは、とても日本では考えられないだろう。韓国社会には問題が山積しているが、ダメなものには人々がためらわずに街頭に出るというのはうらやましい。
日本人は、もう長いこと、不正に声を挙げなくなっているなあと、あらためて気づかされる。後期高齢者医療制度への怒りが、もっと様々な行動につながってほしいものだ。
深夜12時をすぎた。ホテルの部屋の窓から、まだ、デモ参加者の歌声が聞えてくる。