運動会がおもしろい

娘の運動会に行った。
今せわしくてそれどころではないのだが、家庭を顧みない日々が続いている私にとっては、運動会は大事なイベントなのだ。今週は徹夜などで、娘の顔も見ない日が二日もあったし。
梅雨に入って雨が続いていたのに、きょうは晴れた。ちょっと遅れて中学の校庭に着くと、「羞恥心」がバック音楽で流れ、トラックで徒競走を、フィールドでは走り高跳びをやっていた。はじめ父兄の後ろで立って見ていたが、どんどん面白くなって、一番前に座って観ることにした。
女子走り高跳びで、背の高い子が、はさみ跳びで軽々とバーを越えた。次に出てきたのは小さな女子で、さっきの子と身長差20cm近くありそうだ。無理だろうな・・・
慎重にタイミングをはかり、リズミカルに助走して体がふわっと浮いた。きれいなベリーロールですれすれでクリアした。やった!心の中で拍手。スポーツ観戦の楽しみって、こういうことなんだなと気づく。
頭の中が自分が中学生だったころにタイムスリップしていく。女子テニス部のキャプテンのNさんは美少女だったなあ。小柄だが脚も速く、運動会ではリレーに出ていた。男子の憧れの的で、数年前の同窓会では「Nさんは今どうしているかな」と誰かが言うと、彼女の思い出話がひとしきり出たっけ。私の意識に、「小柄」で「美少女」で「スポーツができる」の三点セットが「かっこいい」というすりこみができたのはNさんのせいだな。
徒競走に目を転じる。高学年男子になるとさすがに迫力がある。身体能力の差も大きい。ぶっちぎりで200m走の1等になった子は、ビリとの差が50mを超えた。速い子、遅い子、背の高い子、低い子、太ったの、痩せたの、障害のある子もいる。
人間は、個体差のきわめて大きな動物だなあとつくづく思う。
テレビドキュメンタリーで、類人猿はまだ個体を見分けられるが、魚となると群れの中から特定の一匹を人間が見分けるのは、かなりむずかしいだろう。ペットとして身近に接すると事情は異なる。私はメダカを飼っていて、ある程度個体を見分けられる。
では蟻はどうか。サックス奏者の坂田明さんはミジンコを飼っているが、「きょうはサブローは元気だな」などと個体を識別しているのだろうか。とても気になってきた。
運動神経が鈍かった私は、運動会は能力差がむき出しになるので嫌いだった。娘の小学校では教員組合の主導で「順位をつけない運動会」をやっていたが、勝ち負けの結果ははっきりしているのに、それを1位、2位と呼ばないだけなので意味がないと思う。
運動会が嫌いな子どもに理由を聞くと、その一つに、自分のせいでクラスに迷惑がかかるのが心苦しいというのがある。とすれば、オリンピック方式にしたらどうか。クラス全員リレーはやめる。全競技を勝ち抜き選にし、学校全体のチャンピオンを決める。最後にメダルの数でクラスの順位を決める。それなら、脚の遅い者も心の負担がなく観戦を楽しめる。
いろいろともの思いにふけっていたら、うちの娘が前を走っていった。ビリだった。私に似たことをうらまないでほしい。