せまる介護保険の危機

後期高齢者医療制度を「手直し」する動きが急だ。
政府は国民の憤激を抑えようと、負担増を和らげたり、経過措置という「ならし」期間を設けたりして、必死に「お化粧」をしだした。実は、直接的な負担が上がるとか下がるというのは、表面的なことで、着々と高齢者の医療制度がひどい方向に向かっていることについては、これから書いていく。
ところで、介護保険にもおそろしい事態が起きようとしている。
二年前、改正介護保険制度がはじまった。それまでは、「要支援」、「要介護1〜5」の6段階の認定区分が、「要支援1・2」と「要介護1〜5」という7区分になった。「要介護1」のかなりの人が「要支援1」「要支援2」とされて、利用者へのサービスがどんどん削られていった。
厚生労働省が23日発表した介護給付費実態調査によると、06年度の介護保険サービスの利用者数は429万5000人で前年度を10万2000人下回り、00年度の制度開始以来、初めて利用者が減った。06年4月から軽度者への福祉用具の貸与を制限したことなどが原因。利用者負担を含む介護費用も前年度より1233億円少ない6兆1724億円となり、初めて減少した。》2007/ 8/24 asahi.com
利用しにくくしたから、利用しなくなった。結果、経費が削減されているのだ。事業者も経営難に陥って事業所の数も減ってきている。政府は、国民をいじめて社会保障費を減らそうという、本末転倒をやっている。
5月14日とんでもないニュースが朝刊各紙に載った。以下、アサヒコムより。
財政制度等審議会財務相の諮問機関)は13日の会合で、6月にまとめる意見書に介護保険制度の抜本的改革を盛り込む方針を決めた。軽度の介護利用者に対する給付抑制・負担増を検討課題にする見通し。財務省は提言に基づき、09年度予算で社会保障費の伸びを抑制する姿勢だ。(略)
特に議論を呼びそうなのが介護保険の見直しだ。
 高齢化の進展で、介護給付の費用は00年度の制度開始以降、2倍に膨らんで08年度は7.4兆円に達し、65歳以上の人が払う保険料も全国平均で4割増える見込みだ。想定を上回るペースで給付・負担が拡大しており、財政審はこの日、「抜本的な見直しをする時期にさしかかっている」との考えで一致した。  財務省は年内に予定される介護報酬の改定に合わせて、制度の対象を体がより不自由な人に絞り込みたい考えだ。財政審では「要介護2」以下の軽度の人(07年3月末で274万人)に対する適用を見直した場合の影響について、3通りの試算を提出。給付費全体の軽減効果は2兆900億〜1100億円で、個人が払う保険料も1万5千〜800円減るという。
 ただ、これらの見直しはサービスの低下も招く。財政審が具体策の提言に踏み込むかは不透明だ。》
「要介護2」以下とは、「要支援1と2」、「経過的介護」、「要介護1と2」がみな含まれる。介護保険利用者約430万人の3分の2にあたる。これらの人々を介護保険の対象から外す試算を行なっているのだ。実に恐ろしいことである。
いま大騒ぎになっている後期高齢者医療制度は、5年も前から論議され、2年前に国会を通っていた。そのころ、メディアは大きく扱ってこなかった。私自身もあまり関心を持たなかった。今となっては、そのことが恥ずかしい。この失敗を、介護保険の改悪で繰り返してはならない。今からメディアはしっかりと警鐘を鳴らしておかなくてはならない。