歴史を百年、千年単位で見れば、人類の行為が地球に与える影響は、すさまじい勢いで巨大化する一方だ。それがいまの環境危機を生み出している。しかし、同時に、一般の人民の意志が、人類の運命に対して果たす役割も確実に大きくなっている。
いまの環境危機は、一般市民が人類の活動、とりわけ「資本」の行動に、どれだけ早く規制をかけて、地球への負荷をコントロールできるか、その時間勝負である。
地雷禁止運動で有志国になったカナダ、クラスター爆弾廃止運動で有志国になったノルウェーなどの国々は、市民の意識レベルが高く、市民の声に近い勢力が政府を握っていると思う。本来は、全世界の国々で、市民の自覚の高まりを促し、政府を変えて・・・という手順になるのだが、もう時間がない。
そこで、地雷とクラスター爆弾の禁止で成果を上げた方式が有効だと思ったのだ。
まずNGOと有志国で走り出し、他の国々にも強力なロビー活動をかけて、追随せざるを得なくする。追随する過程で、それらの国にもNGOが組織され市民の自覚も促されるという、いわば、「上から」と「下から」合わせての啓蒙が期待できる。
この場合、NGOだけではダメで、国家(有志国)が同時に動くというのがポイントだ。
私は十年くらい前まで、ヨーロッパは「凋落」の代名詞だと思っていた。もう学ぶべきものなどないとさえ思ったこともある。しかし、いまヨーロッパ、特に北欧の動きには目を見張らされる。過去、大国の横暴に対抗するのは「第三世界」という時代があった。今はヨーロッパが、特に環境問題、貧困国への援助、軍縮などのテーマでは米露中への対抗軸である。強みは、高い意識を持った世界中の市民を見方につけていることだ。
「NGOと有志国の連携」というと日本政府が思い浮かべるのは、IWC(国際捕鯨委員会)での悪夢である。だがNGOと言っても実にさまざまだ。捕鯨推進を掲げるNGOもある。要はやり方である。なお、今回の「有志国」ノルウェーは、IWCの決定に反対して堂々と捕鯨を続けている国であることを付け加えておこう。
いまや日本も、国連やアメリカに頼らずに、ダイナミックな外交を繰り広げ、国際的に大きな発言力を持つことが現実的に可能なのだ。広く世界の市民を視野に置きながら、他方で、「置き去り」にされそうな米露中などの大国との「仲介」をするユニークな役割を果たしてもよい。
日本政府にこういう行動を取らせるには、私たち国民が意識を高めていかなくてはならないのだが。