産婆さんの復権を−その2

今週あたま、深刻なトラブルがあった。人の生き死にに関ることなので、もちろん最優先事項だ。久し振りに弁護士にも相談した。こうなると注意が他のことに回らなくなって、次のトラブルを誘発する。大小さまざまな問題を抱えて、へとへとになった。
こんななかで、ひとつ、うれしかったことは、今朝、読売テレビの「ウエークアップぷらす」(NTV系全国放送)でジン・ネット取材制作の助産院危機を放送できたことだ。3月27日の日記に書いたテーマである。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20080327
医療法19条の改正で、助産院が医師や病院との提携条件が厳しくなり、提携契約ができないと助産院をやっていけなくなるというもの。それを助産院の自助努力でやらせ、提携するかどうかは医師・病院側の自由なので、負担増を恐れて提携してくれない。去年10月の段階では34%助産院が提携できていなかった。厚労省が指導を出してほとんどの助産院が提携契約を結べたが、これはいつでも医師・病院側から切ることができる。現に、いったん提携すると言っておいて、しばらくたって提携解消されたところがある。この問題は、訴え続けてきた「お産サポートJAPAN」のサイトが詳しい。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~osansupport/
番組では迫力あるお産のシーンが出てきた。矢島床子さんの矢島助産院と妊婦さんが全面協力してくれ、密着取材ができた。取材したのはフリーの浅井寿樹(あさい・としき)さん。普通は出産現場は女性カメラマンしか入れないものだが、浅井さんは信頼を得て、最後まで密着できた。その成果として、子どもを含む家族と何名もの助産婦に囲まれた、感動的な出産シーンが放送された。スタジオで浅野史郎氏が、こういうお産に立ち会った子どもは「非行にならないんじゃないか」とコメントしたのが印象に残った。
前回書いたが、占領軍によってアメリカ式の管理出産が日本に持ち込まれ、産婆さんが、遅れた古臭いものとして社会の片隅に追いやられた経緯がある。いま、日本では99%が病院で出産している。病院にも助産師はいるが、開業助産院でのお産ということになると1%未満にすぎない。
病院では、医師や看護師の少ない週末や病院の会議などの日をさけて出産日を決める。統計では、火曜と金曜の出産が多いという。日にち管理のため、陣痛促進剤で出産日をコントロールする。新生児はケースに入れられて隔離され管理される。新生児を母親のそばに置くことは「清潔」ではないという考えが前提にあるのだろう。こうして、病院での医療行為として出産を扱うということは、お産を「病気」とみなすことを意味する。
しかし、お産は「病気」ではない。8割以上のお産は通常出産で、助産師で十分対処できる。「逆子」など異常分娩の場合にだけ病院に行けばよい。ヨーロッパでは、助産師の役割が再評価されて、活躍の場を広げているという。管理出産の本場アメリカでさえ、見直しの機運がある。
日本でも助産師をもっと活用して、通常出産の一定部分を助産師にまかせるならば、それだけで今の極端な産科医不足を緩和できるはずだ。
さらに、助産院でのお産のよいところは、とても人間的な雰囲気があることだ。病院では陣痛が来ても分娩間近になるまでほって置かれたり、看護師に「我慢しなさい」などと怒られたりするが、矢島助産院では、ずっと付きっ切りで見守ってくれる。体をさすってくれ、「大声出しても、おしっこやウンチ出してもいいんだからね」と何でも受け入れてくれる。
薬でコントロールしたりせずに、自然に陣痛が起こるのを待つ。早朝に陣痛が来るか深夜になるかわからない。助産師は大変な仕事だと思う。よほどの責任感とやりがいがないとやれない仕事だ。ぜひ、今回の騒動が、助産師という職業の評価を高めて欲しいと願う。