台湾では政権交代が当たり前

きょうはサンデープロジェクトで、ジンネットが担当した特集《台湾総統選挙−なるか政権交代》が放送され立ち会った。
来週土曜日に投票が迫った総統選は、国民党の馬英九民進党謝長廷に勝利して政権交代しそうな気配だ。今回の特集は、「政権交代」がテーマだった。
今回リポートをお願いしたジャーナリストの内田誠さんも弊社のディレクターも、台湾の人々の政治意識の高さに感心していた。
「これまでの2期8年総統を出した民進党は腐敗したので、今回は国民党にやらせよう。それがダメならまた政権交代させればよい」という会話が普通に街角で交わされているというのだ。
今回の国民党候補、馬英九は、党是の「統一」を任期中は棚上げすると言明。これまで国民党に不信感の強かった中南部で、馬氏が農作業を手伝いながら対話する、ロングステイと呼ばれるキャンペーンで、百軒の農家に泊まったという。こうして国民に顔を向けた政策を打ち出すようにもなった。
このキャンペーンを仕掛けたのは、馬候補の選対ブレーンの楊渡氏だが、彼は、元新聞記者で国民党を批判してきた人だ。あえてこういう人に協力を求めたのは、国民党の懐の深さなのか、あるいは絶対に勝とうという必死さなのか。天安門事件を現場から報道した記者でもあるという。楊氏がはじめ農村泊まりこみを提案したら、馬候補がいやがったという。それを説得して馬候補にやらせ、成功したのだ。
8年前と4年前に負けた国民党は、敗北から学んで、「変身」を遂げた。政権交代の効用である。
韓国は10年で2回、台湾は馬候補が勝てば、8年で2回の政権交代となる。そもそも台湾では、選挙で総統を選ぶようになってわずか12年しかたっていない。一方、長い選挙の歴史を持つ日本は、63年で政権交代は2回だけだ。日本が学ぶべき点があるように思う。
ところで、台湾を番組で扱うと用語法に注意しなくてはいけない。日本は台湾を国家として認めていないから、「国民」ではなく「住民」、「首都」も使えないから、内田リポートでは「台湾最大の都市、台北です」となっている。中国との関係は「両国関係」ではなく。「両岸関係」。まるで漫画のようだが、こういうルールをはずすと抗議がくる。これを日本政府もメディアも忠実に守っている。
中国の横暴といえば、奇しくも、チベットの騒乱がニュースになっている。中国は、ダライラマ法王が日本を訪問しようとするたびにビザを出すなと抗議してくる。法王は政治的な発言をしない条件でなんとか短期滞在を認められてきた。日本はアメリカだけでなく中国の顔色もうかがって行動しているのである。
メディアも同じだ。私はインドでダライラマ亡命政府と亡命チベット人を取材したことがあるが、結局日本のどのテレビ局でも放送できなかった。TBSが筑紫哲也氏とダライラマ法王との対談を放送したのは画期的だった。もっとも法王は宗教と文化についてのみ語ったのだが。まともにチベット問題を扱ったドキュメンタリーは、大マスコミでは放送できない。
きのう、フォトジャーナリストの山本宗補さんに会う機会があったが、ミャンマー民主化運動からも、北京オリンピックボイコットの声が上がっているという。いまや世界の巨大な工場兼市場となった中国にたてつく国はなく、声を上げるのは市民だけである。