今朝の朝日新聞―工作員とクジラ

takase222008-03-11

今朝の朝日新聞が「スクープ」を載せた。
地村さんと蓮池さんの拉致を指示した人物として、北朝鮮工作機関の幹部2人が特定されたとの記事を一面トップで出している。この2人は李完基(リ・ウォンギ)と姜海竜(カン・ヘリョン)で対外情報調査部の元部長と元副部長。「警察当局はこの幹部2人が金正日総書記の側近だったと見ている。一連の拉致事件金正日総書記と直接接点のある政府幹部の関与疑惑が浮上したのは初めてで、立件に向けた詰めの捜査を進めている」と記事は書いている。
去年2月、警察は蓮池さん拉致の容疑者、チェ・スンチョルに指示を出したとして、対外情報調査部の指導員、ハン・クムニョンとキム・ナムジンを国際手配した。一年経って、さらにその上の地位にある今回の2人を出してきた。手配したとしても実効性は薄いのだが、捜査が段々と上に遡る形で進んでいくことを警察はアピールしたいと思っているようだ。
しかし、この二人は拉致問題にかかわる人たちには、ずっと前から知られた存在だった。写真は、78年に香港から拉致された韓国の有名女優、崔銀姫チェ・ウニ)氏が、着いたばかりの北朝鮮南浦港岸壁で撮影されたものだ。ショックでうなだれる崔氏をはさんで、にこやかに笑っている右の男が李部長、左が副部長の姜だ。後ろに小さく見えるのが金正日。お気に入りの韓国女優を厳寒の真冬にわざわざ岸壁までお迎えに出たのだ。拉致指令を金正日自身が出したことは明白である。
崔銀姫氏は86年ウィーンで脱出に成功、翌年末には手記を出し、拉致を証拠付ける写真も公開している。朝日記事によれば崔銀姫氏に日本の警察が事情を聞いたのが今年2月だという。いくらなんでも遅すぎる。
崔氏は手記に、南浦の埠頭に着いたときのことをこう書いている。
《わたしはついに北朝鮮の地を踏んだ。1978年1月22日午後3時頃、永遠に忘れることのできない日だ。・・・まわりから「偉い人が現れた」とひそひそ話をする声が聞えた。・・・前から誰かがこちらに向ってコツコツと歩いてくる音が聞えた。そして、少し太めの男性の声が聞えた。「ようこそ、よくいらっしゃいました。崔先生、私が金正日です」
彼は手を差し出し、握手を求めた。・・・わたしは内心、憤りで腹の中が煮えくりかえりそうであった。
わたしはうなだれたままためらっていたが、手を差し出した。
その瞬間、カメラマンがしきりにシャッターを押した》
カメラマンに撮影させるということは、金正日にとって、拉致はちっとも後ろ暗いことではないのだろう。
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きょうの朝日新聞でもう一つ注目したいのは社説だ。「捕鯨問題 この機に対話を深めたい」とタイトルはどっちつかずだが、本文ははっきり商業捕鯨推進の立場に立つ画期的なものだ。
IWCが日本の捕鯨船を妨害するシーシェパードを非難したことを「歓迎したい」とし、「クジラを捕って食べる習慣に粘り強く理解を求めていくことが大切だ」という。そして、欧州が一枚岩でなく、ノルウェー商業捕鯨を続けている例など出しながら、「いま大切なのは、こうした声を背景に、捕鯨そのものは人道に反さない、という考え方を広めていくことではないか。・・・そうすれば、少なくとも沿岸の商業捕鯨には道が開けるのではないか」と主張している。「そのうえで資源管理の主張をすればよい。そこでは南極海のミンククジラの生息数などについて、捕鯨国に有利なデータもある」とまで書いている。商業捕鯨南氷洋にも出ようという方向を指し示している。
これまで、シーシェパード非難の社説を載せず、「日本にはもはや鯨を食べる文化などない」、「捕鯨はやめよう」という記事を連続して載せていた朝日新聞だが、ついに方針転換したのか。
捕鯨勢力から批判を受けながらも、ノルウェーは堂々と独自の道を歩んでいる。ノルウェーは、地球環境や南北間格差問題などにも熱心で理性的な国である。
一方「国際協調」という言葉に弱く、横並びが好きな日本。ノルウェーを見習って、道理ある孤立を恐れないようになってほしい。