「イカ天」に日本の希望を見た

昨夜TBSで20年近く前の「イカ天」のリバイバル総集編を放送していた。ニート忘年会から帰ってから、深夜、録画で観た。懐かしかった。正式名称は「いかすバンド天国」。素人の音楽バンドが競い合う深夜の生番組で、89年から90年にかけて2年近く続いた。
私は外国に住んだ時期の83年から94年ごろは、日本のテレビ番組の思い出がほとんどないのだが、この番組だけは特別だ。フィリピンで危ない目にあって、次にタイに赴任するまで日本に住んでいた時期に重なっていたのだ。
忘れられないのは、異次元バンド「たま」が超実力派ハードロックバンド「マルコシアス・バンプ」と対決した89年12月9日。1票差で「たま」が勝ち、めでたく5週勝ち抜きでグランドキングになった。その世紀の対決に感動した私は、後に両方のバンドのCDを買い求めて聞いていた。
いやはや、よくもこんな人たちがいるなと驚く、実に個性豊かなバンドが、つぎつぎに登場した。この総集編を娘も楽しそうに観ていて、こんな番組があるなら私もバンド作って出てみたいと言う。たしかに、この番組は、日本全国の音楽好きを刺激し、その才能を育てたと思う。「たま」は紅白にまで出たし、「ビギン」は沖縄サウンドを変えたとまで言われるメジャーな存在になった。
高校生がロボットでゲームを競うNHKの番組がとても面白いが、あれって「イカ天」に通じるものがある。今や世界大会まであって、2〜3年前、たしかベトナムが優勝して驚いた覚えがあるが、奇抜な工夫に感心することが多い。観ているこっちまで創造力が刺激される。あの番組を目指して、全国で高校生たちが頭を寄せ合ってアイディアを練っているのだろう。素晴らしいことだ。
いま若者がダメだ、だらしない、このままでは日本はどうなるんだ、と悲観的な議論が喧しいが、要は機会=チャンスを与えることではないのか。しかも、それが楽しい、カッコいいと思わせるものであれば、どの時代でも若者は食いついてくる。そして、明らかに世界的な転換期に入った今、そうしなければ逆に大変なことになる。
幕末、日本は、「志士」というものすごい才能の大集団を輩出して危機を救った。坂本龍馬らは、「志士」たちの圧倒的エネルギーを方向付ける「助産婦」だった。まさに草莽崛起(そうもうくっき)である。
イカ天」から、どんどん話は広がってきたが、転機を乗り越える力をこの国は必ず持っているはずだ。私はそんな芽を探していきたい。