憲法9条など

きのうNHKで憲法討論番組があった。護憲派が優位だったが、改憲派論客(小林よしのり小林節)が弱すぎた。会社の若いのを誘って飲み屋で憲法論議をする。彼ら若い衆、大勢は護憲で、愛国心はない(というより、意識にない)。9条を変えるかどうかより、この国にどう向き合うかが大事なのだが、これについては、またいつか論じることもあろう。
9条に対する私の立場は、「とりあえず護憲」だ。
自衛隊」と「9条」はつまるところ2者択一である。戦後レジームの大枠(あくまで大枠)は評価できるから、憲法の前文と9条1項は保持し、そのうえで自衛隊を日陰者にしないために2項だけは変えるべきだと思う。ただし、今はとりあえず改憲しないでおきたい。好戦的なアメリカの姿勢と、対米追従政権が続く今の日本での改憲は、不必要な戦争に日本を巻き込む政治イベントに利用される可能性があるからだ。つまり、9条は本来改められるべきだが、今はその時期ではない。とりあえずの後ろ向き「護憲」である。総論改憲、各論護憲とでも言おうか。

ニューヨーク・フィル平壌に招く動きがあるという朝刊の記事には驚いた。友好ムードを演出するためでヒル代表も前向きだという。アメリカはすでに北朝鮮を「テロ支援国家」とはみなしていないことがはっきりした。さらに、濃縮ウラン問題を「非核化」作業部会だけでなく「米朝」部会でも扱うという記事があった。「密約」の匂いがプンプンする。アメリカは北朝鮮との「手打ち」に向かって前のめりだ。

私はネオコン路線には反対だが、アメリカが変心する前の、金融制裁=アーミテージ路線にはエールを送っていた。偽ドルや覚醒剤などの不法行為による外貨収入を断ち切ると同時に金融制裁をかけるという政策は、これまでのいかなる対策、措置よりも北朝鮮を追い詰めるのに大きな効果があったからだ。(関心のある方は、私の『金正日《闇ドル帝国》の壊死』(光文社)を読まれたい)

アメリカは去年秋の中間選挙共和党が大敗したので、外向路線全般が融和的になっているという解説があるが、必ずしもそうではない。これも今日の新聞記事だが、アメリカはイラン革命防衛隊を「テロ組織」に指定する方針だという。「指定すれば主権国家の軍隊をテロ組織と見なす初めてのケースとなる」(産経8/26朝刊)。
北朝鮮には甘くする一方で、イランにはますます厳しくというスタンスを強めているのだ。強大なイスラエルロビーがあるため中東政策は「軟化」しない。一方、北朝鮮政策は選挙の「票」にならず、形だけでも「成果」が上がればよいから、融和パフォーマンスが進んでいく。

核をどうするかという観点からみれば、アメリカは本筋からますますそれている。核兵器開発を強めると明言して実際に核実験した北朝鮮に「アメ」を与えているのに、平和利用を貫くと宣言してIAEAの査察を受け入れているイランには圧力を強めるというのがアメリカの政策なのだ。
結局、対北朝鮮融和策はアメリカ国内政治の都合で決まっている。日本は「北朝鮮問題があるから、イラク派兵でも何でもアメリカの意向に従う」という奴隷のような親米一辺倒から脱却して、新しい方向を考えなくてはならない。