沖縄だけでなく本土でも住民投票を

放送のお知らせです。
「平成ニッポンを歩く 報道カメラマン80歳 日本縦断」が、1月13日(日)深夜24時55分から日本テレビ系「NNNドキュメント」で放送されます。

ベトナム戦争など歴史的瞬間を取材してきた現役報道カメラマン石川文洋さん。80歳になった2018年7月、新たな旅に出た。日本最北端、北海道宗谷岬を出発、太平洋側を通り、沖縄那覇市まで徒歩で撮影しながら徒歩で縦断する。
 老練カメラマンの眼に、平成最後の1年をきった日本はどう映るか。石川さんの写真とエッセイを織り交ぜながら2回の放送に分けて、旅の全容を伝える。今回は北海道から福島までの東日本編。http://www.ntv.co.jp/document/
(去年7月、北海道最北端の宗谷岬から日本縦断の旅の開始。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20180716
(11月30日東京の日本橋に到着。私は撮影したあと、文洋さんの旧友やファンらと夜の宴会を楽しんだ。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20181130
 この企画は、うちの若手のディレクター大小田直貴君が発案し、一人で文洋さんに同行してカメラを回し自ら編集したものだ。大先輩のジャーナリストから何かを学びたいという気持ちで文洋さんに密着したという。明日がナレーション入れだが、とてもいい作品に仕上がったと思う。どうぞご覧ください。なお、文洋さんが東京に到着した日は、私が撮影しました。
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 一昨日、米ホワイトハウス向けのStop the landfill of Henoko / Oura Bay until a referendum can be held in Okinawa(辺野古・大浦湾の埋め立てを住民投票まで中止せよ)の電子署名をやった。期限の1ヵ月が過ぎる直前、私のように駆け込みで署名した人はたくさんいたようで、署名数が急激に伸びて20万を超えた。1ヵ月で10万筆を超えた署名には、ホワイトハウスは60日以内に回答することになっている。こういう仕組みがあると署名にもやりがいがある。さて、どんな回答が来るのか。
 《米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、米国ホワイトハウスの請願サイトを利用してトランプ大統領に埋め立て工事を止めるよう求める請願書に賛同する署名は、開始から1カ月の期限となる日本時間8日午後2時までに約20万筆が集まった。
 署名運動はホワイトハウスの請願サイト「WE the PEOPLE」で昨年12月8日から始まり、開始11日目で10万筆を超えた。請願書は辺野古移設の賛否を問う2月24日の県民投票までの工事中止を求めているが、署名が1カ月間で10万筆を超えれば、米政府は何らかの回答をすることになっている。(略)
 沖縄出身タレントのりゅうちぇるさんやモデルのローラさんらが賛同したほか、英ロックバンド「クイーン」のギタリスト、ブライアン・メイさんも「沖縄のサンゴ礁の破壊を止めるための請願書に署名する最後のチャンス」と協力を呼びかけた。》毎日新聞8日)

 『沖縄だけではなく全国で一斉に住民投票したらどうか。「我がこと」として考えるために』ウェブロンザに載った石川智也記者(朝日新聞)の素晴らしい記事。ぜひ読んでください。
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019010500002.html?page=5
 このブログでも以前、「米軍基地を沖縄から本土へ引き取る」運動が突きつけるものについて書いた。沖縄ではなく本土の我々が問われているのである。
http://d.hatena.ne.jp/takase22/20180123

 以下、石川記者の記事の一部を紹介したい。

 「沖縄の歴史に向き合え」という主張も散見される。辺野古問題の原点に沖縄の歴史があるのは確かだろうが、その原点をどこにおくかは、それほど自明ではない。

 普天間飛行場が住宅、学校、病院、農地を強制接収して建設されたこと、その権利回復が何をおいても必要なことに、異論を唱える人はいないだろう。その理不尽を呼び込んだ米軍統治と「ありったけの地獄を集めた」沖縄戦、それが本土決戦の捨て石だったという苦難の歴史がいま、「銃剣とブルドーザー」を彷彿とさせる土砂投入の光景と相まって「辺野古ノー」という一点に噴出しているというのも、真実に違いない。
 しかし、その淵源を明治政府の琉球処分、さらには薩摩藩の侵攻、豊臣徳川政権の琉球政策にまで遡って、本土のメディアや国民が沖縄のアイデンティティーに理解を馳せ心情的に「寄り添」えば、辺野古問題の解決策が見えるというわけではない。
 近代以降の中東史に起因するアラブとイスラエルの対立を、まるで太古から続き永劫争う宿命の宗教紛争とみて投影する誤った認識と同様、「本土と沖縄の対立は根深い歴史問題だ」「基地問題は複雑で簡単に解決できない」という言説は、果てしない現状追認に反転しかねない危険もある。
 普天間飛行場の移設問題と、世界でも最も互恵性がなく主権喪失度が高いとされる日米地位協定の改定問題、そして日米安保の是非論は、根っこはつながりながらも解決に要する道筋や手法は異なる別個の課題だ(沖縄でも安保容認は世論調査で6〜7割、翁長雄志前知事も安保を重視していた)。
 こと辺野古問題について本土のメディアやリベラルがすべきは、沖縄で進行している事態への本土の主権者の責任を突くことだ。民主的権力の源泉たる国民を権力と切り離して政権のみを批判するのは、ご都合主義というだけでなく、天に唾する行為と言える。

 辺野古問題は沖縄の問題ではなく全国の問題なのだ、という訴えは、本土の基地引き取り運動というかたちで先行している。基地問題を本土の人間に「我がこと」として認知してもらうための方法論として昨今あらためて注目される。

 その市民運動のメンバーが提案した陳情・意見書が昨年、東京・小金井市議会にはかられ曲折のすえ可決されたが、その顛末は、この国の「リベラル」の有りようをよく示すものだった。
 陳情書は、普天間の代替施設が国内に必要か国民的議論を行い、必要との結論ならば、民主主義と憲法に基づいて一地域への押しつけにならぬよう公正な手続きで決める――という内容のもの。賛成多数で採択され、国への意見書をあらためて可決するはずだったが、陳情に賛成した共産党がとつぜん翻意した。意見書の「全国すべての自治体を等しく候補地とする」との文言が、日米安保廃棄と在日米軍基地全面撤去を主張してきた党の方針と整合性がとれないことに気付いたためだ。
 市議は「米軍基地を容認しているとの誤解を与える。陳情への賛成は間違っていた」と陳謝。結局、「基地の国内移設を容認するものではない」などと文言修正され意見書は可決された。

 「基地はどこにも要らない」と言いながら、沖縄への加重負担を放置し続ける――。「引き取り運動に批判的な人は保守よりリベラルに多い」とメンバーの一人は話す。
 一方、安保条約が日本の施政権下の防衛のみを定めた5条の片務性を米軍の駐留を認める6条で相殺するものである限り、この体制を支持する8割以上の国民は、米軍基地が身近にあることを受け入れなければならない(頭上をオスプレイが飛び交うことを認めるかどうかは、また別問題)はずだが、「沖縄の基地集中は私たちにも責任がある」と口では認めつつ、現状を見て見ぬ振りして安保の便益のみを享受し続けた。
 本土のリベラルと保守は共犯関係にある。

 NHKの2017年の世論調査によると、沖縄では辺野古移設に「反対」が63%を占めたが、全国では「賛成」が47%と、「反対」の37%を上回っている(「どちらかといえば」も含む)。沖縄以外の人に対する「仮にあなたの住む都道府県に米軍基地が移設されるとしたらどう思うか」との問いに対しては、58%が「反対」で、「賛成」は33%だった。

 さらに紹介したい。沖縄の米軍基地を(「全面撤去」ではなく)「本土並みに少なくすべきだ」と答えた沖縄以外の人に、自分が住む都道府県への移設についてどう思うか聞くと、70%が「反対」で、「賛成」は27%だった。
 沖縄に基地が固定化される構造的意識は、このように可視化される。

 辺野古への移設強行は本土の民意ではない、基地問題だけで政治家や政党を選んだのではない、とあくまで言うのなら、沖縄と同様に、いまこそ本土でも住民投票を実施し、明確な「民意」を量るべきだ。
 都道府県議会で投票条例を成立させ一斉に実施すれば、事実上の国民投票となる。国民投票の対象・範囲についての検討を求めた国民投票法成立時の付帯決議(2007年5月11日)に基づき、同法の改正か特別立法を国会が進めるという方法もあり得る。
 普天間飛行場の代替基地を自らが住む都道府県に引き取ることに賛成か反対か――質問はそれ一つでよい。