日本のリベラルとは

 夜、帰宅途中、ときおり甘いにおいが漂うのに気付く。金木犀の開花の季節だ。

 先日行った蕎麦屋の庭に大きな金木犀があった。そばの楓がすでに赤く色づいていた。神無月、節気は寒露。周りが秋色になっていく。
 初候は「鴻雁来」(こうがん、きたる)で8日から。次候は「菊花開」(きくのはな、ひらく)が13日から。18日からが末候で「蟋蟀在戸」(きりぎりす、とにあり)。このキリギリスはコオロギだという。しばらく前から秋の虫の鳴き声を聞きながら爽やかに眠りについている。
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 衆議院選挙が公示された。小池百合子氏の希望の党はここ数日で失速したようで、支持率ががくんと落ちている。しかし、こうなると、自民圧勝、安倍続投となる可能性がある。
 それにしても、党首討論やら応援演説やらに顔を出しながら、政策を作り、すでに離党者も出始めた党の運営もやるというのだから、当然都政はストップしたままだ。小池氏、ほんとは東京都政にそもそも関心をもっていなかったのではないか。注目と権力を求め、風を読みながら次々目新しいものに飛びついていく。爆笑問題太田光「なんで小池さんがグリーンの服を着てるのか分かった、彼女、カメレオンなんだ」。
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 新聞に「安倍政治 3極で問う」との大見出し。3極とは、自公と希望・維新、それに立憲民主党・共産・社民で、最後の勢力は「リベラル系野党」だという。しかし、党内に異論を認めず、党首を選挙(通常の意味の)で選ばない共産党をリベラルと呼ぶのはさすがに変だろう。リベラルって何だ?東京新聞に記事が出ていた。
《リベラルには「個人の自由、個性を重んするさま。自由主義的」(広辞苑)「政治的に穏健な革新をめざす立場をとるさま」(大辞泉)という意味がある。
 だが、「永田町」で語られるリベラルは「護憲派」といった受け止めが多いものの、厳密な定義はいま一つ定かではない。改憲を掲げる自民党にも、「リベラル」を自任する政治家がいる。
 (略)来日20年のフランス人ジャーナリスト、西村・プペ・カリンさん(47)は「日本の『リベラル』は説明が難しい」と話す。フランスで「リベラル」は経済の自由主義を指すため、仏語の記事では日本のリベラルを「左派」と訳すことが多い。編集会議で「使い方に注意を」と話題になった。
 吉田徹・北海道大教授(政治学)によると、冷戦後、個人の自由を大事にすることがリベラルの核心になった。ただ、米国では少数者の権利擁護や女性の避妊、同性愛の是認など自己決定権の強調という文脈で語られ、欧州では市場への国の介入を防ぐという経済的な意味が強いという。
 吉田教授は「護憲派=リベラル」という永田町的な見方について、自民党社会党が対立した「55年体制の遺産」とみる。冷戦終結後も、改憲と護憲の対立は続いた。90年代に「民主・リベラル新党」結成をめざした社会党が消費者や生活者を大事にする立場からリベラルを使うようになり、革新政党とリベラルが結びついていったという。
 衆院選を前に飛び交う背景について、「『反戦脱原発リベラル』はなぜ敗北するのか」(ちくま新書)の著者、浅羽道明さんは「野党は『反安倍』一点張り。有権者をつかむポジティブな政策が結局ないゆえ、リベラルといったあいまいで口あたりのいいラベルにすがっているだけだ」と手厳しい。吉田教授は「選挙戦を通じ、『あなたが言うリベラルとは何か』という政治家同士の議論があっていい」と提案する。》

 リベラルかどうかというレッテルが大事なのではなく、安倍政治はなぜだめなのか、基本に立ち返ることが必要だ。