大本本部で見た首のない観音様

takase222017-09-09

 北朝鮮がミサイル発射や核実験をすると、政府が非難声明を出し北京の外交ルートを通じて北朝鮮に抗議、「地域および国際社会の平和と安全を著しく損なう」として、米国、韓国、中国、ロシアなど関係各国との連携を強化、国連安保理におけるさらなる対応を検討する。これがルーティーン化して、だんだん慣れてしまった。
 ただ、先月29日の日本上空を越えたミサイル発射と今月3日の6回目の大型核実験のあとは、日本政府が「最も強い言葉で」抗議すると新たな表現になっている。日本的な言い方ではないなと思ったら、去年4月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の首脳宣言で、「4度目の核実験や長距離弾道ミサイル発射など挑発行為を繰り返す北朝鮮に対し『最も強い表現で非難する』との文言を軸に明記することで調整に入った」という記事があり、もとは英語表現だったと推測できる。
http://www.sankei.com/politics/news/160413/plt1604130004-n1.html
 それにしても、「最も強い表現」で北朝鮮に抗議するとは、具体的にどんな表現だったのだろうか。
 いくらがんばっても、「日本がわが国家をむやみに侵害しようとする米国の策動に相づちを打って凶悪にのさばるなら、上司よりもっと悲惨な運命に瀕しかねない」(労働新聞論評)とか、「米国がわれわれの思想と体制、わが人民を抹殺しようとする無謀な試みを止めずに軽挙妄動するなら、天下無敵の朝鮮革命武力はわめく者、悲鳴を上げる者もいないように最も凄絶で無慈悲な懲罰を与える」(北朝鮮政府声明)とかにはかなわないだろう。私の推測だが、日本政府はそのまま、「最も強い表現で抗議する」という文章にしたのではないだろうか。いずれにしても、北京の北朝鮮大使館にファクス1通を送るだけだから、北朝鮮当局にとっては痛くも痒くもない。対して北朝鮮側のヤクザのような声明は、日本ではテレビ、新聞が繰り返し伝えるのだから、脅迫効果はすざまじい。いきおい「対話で」という声が大きくなるのだが、しかし、どんな対話が可能なのか。閉塞感が強い。
・・・・・・・・・・・・


 「水爆」実験の3日、大本(おおもと)本部で講演してきた。京都府亀岡市亀山城明智光秀が築城した)の2万5千坪の広大な敷地である。アカマツと梅が多く植えられ、緑多い、静かな素晴らしい環境である。
 俗に大本教と呼ばれる大本は、出口なお出口王仁三郎(おにさぶろう)を教祖とする神道系の教団で、「明治25年(1892)、出口なお開祖に大地の主宰神、艮(うしとら)の金神=国祖・国常立尊(くにとこたちのみこと)が帰神して「三千世界の立替え立直し」を宣言、開祖が昇天する大正7年(1918)までに世界への預言・警告の筆先(半紙20枚綴り1万巻)を記し」たことからはじまった。一神でも多神でもあり汎神でもあるという教えだという。エスペラント語のホームページがあるのがおもしろい。
http://www.oomoto.or.jp/
 大本は戦前、激しい弾圧を受けたことで知られる。
 王仁三郎教祖の時代、教団は急速に勢力を伸ばし、皇道派の軍人などにも多くの信者を得たという。また、国家神道ではない教団が政治的変革(昭和維新)を目指し、王仁三郎は頭山満内田良平ら右翼人士とも交流していたという。これを危険視した内務省は、1921年(大正10年)の第一次大本事件と、1935年(昭和10年)の第二次大本事件で教団をつぶそうとした。
 第二次大本事件では、不敬罪治安維持法違反として王仁三郎以下、約1000人が逮捕される、共産党弾圧とならぶ大弾圧事件となる。検束や出頭を命令された信徒は3000人、「最終的に987人が検挙され、318人が検事局送致、61人が起訴された。特別高等警察の激しい拷問で起訴61人中16人が死亡している」。Wiki


 このとき、警察はダイナマイトを1週間使い続けて施設を徹底的に破壊したという。首のない石像があるので、聞くと、警官隊が首を落とした観音様の像なのだった。その歴史を忘れないようそのまま置いているのだという。根性がすわっている。1枚目の写真に写っているのは、落とされた首を修復した達磨の石像とその後ろの首のないままの仏像。2枚目が首のない観音像だ。仏像の首を落とすとは、まるで「イスラム国」の仕業だが、戦前の治安警察がここまでやったという事実に驚いた。
 大本とのご縁は、『神社は警告する─古代から伝わる津波のメッセージ』(講談社)を出版した後、教団の教宣誌に取材を受けたことからはじまった。環境に関する話をと依頼され、宇宙の歴史をひもといてみた。
(つづく)