あすすめの映画は「避難所」、「亡命」、「双葉町」

takase222012-09-28

きょうは、「地平線会議」の報告会で、藤川佳三さんの話を聞いた。
先日紹介した映画『石巻市立湊小学校避難所』の監督である。http://d.hatena.ne.jp/takase22/20120907
藤川さん、はじめは、避難所の実情を発信しようとか映画にしようとか思っていなかったそうだ。しかし、カメラをもって避難所にしばらく居たら、避難所の住民から「これからどうするの?」「いったい何しているの?」と問われるようになり、「これからも継続して撮ります」と言わざるを得なくなったという。
藤川さんはヌーボーとした(失礼)風格で、コミュニティに深く入り込めたのは、彼の親しみやすい人柄があったのだろう。避難所の住民と家族のように親しくなって「内側」から撮影した「はじめての避難所ヒューマンドキュメント」だ。
http://www.minatohinanjo.com/trailer/で予告編が観られます。
10月6日から名古屋、大分をはじめ順次全国で上映される予定だ。東京は9月で終わったが、自主上映会が頻繁にあり、10月3日には江東区森下文化センターで上映される。
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これも映画の話。
きょう、『亡命』の翰光(ハングァン)監督からメールが送られてきて、今年の「ニューズウェーク」の歴史を刻む世界300本の優秀映画に入ったという。
ネットで確認すると、これは「世界を変えたニュースを知る珠玉のシネマ」300本で、映画の聖地ハリウッドが誕生した1912年から2012年までの“世界を変えたニュース100”と、それをテーマとした見ておくべき名作・傑作映画を厳選したものだという。
華麗なるギャツビー』『モダン・タイムス』から『クレイマー、クレイマー』『カッコーの巣の上で』、そして『大統領の陰謀』『キリング・フィールド』などと並んで『亡命』が入っているではないか。すごい!
おめでとうございます。
明日から特別上映がはじまる。明日とあさっては、翰光監督が、現在の日中関係にも触れて話をする。お勧めです。
http://a-shibuya.jp/archives/3709
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さらに映画。
原発事故に関する本格ドキュメンタリーとしてお勧めなのが、『フタバから遠く離れて』だ。13日からオーディトーリウム渋谷ほか全国上映される。
今も故郷を離れて暮らす、福島県双葉町の町民の日常を描いた作品で、監督は船橋淳(ふなはしあつし)さん。船橋さんは、弊社が制作したテレビ番組(ガイアの夜明け)でディレクターをお願いしたこともあり、親しくお付き合いさせてもらっている。数々の受賞歴のある、ドキュメンタリーの世界では知られた監督だ。
テーマ音楽は坂本龍一。この映画、すでに国際的に注目が集まっていて、原発事故のドキュメンタリーとしては日本を代表する作品になるだろう。
http://nuclearnation.jp/jp/
船橋さんは、原発事故後から双葉町民を追って撮影を続けてきた。このブログで井戸川町長について何度か書いたが、実は船橋さんから紹介されてお会いしたのだった。
去年の6月か7月だったと思うが、船橋さんから電話がかかってきて「井戸川町長が高世さんのチェルノブイリ取材に関心を持っていて、町議会で講演してもらえないかと言っている」という話があった。私のDVD『チェルノブイリの今 フクシマへの教訓』が発売されると自費で大量に買って、町政の関係者や知り合いに配ってくれたという。
双葉町民はいまも全国に散らばり、町役場は埼玉県加須市にある。町がこれからどうなるか、方針が定まらないまま、時間がすぎている。
井戸川町長は、町のHPに毎月メッセージを書いて町民を励ましている。
9月の町長メッセージは「誠意ある対応を」
後半はこんな文章だ。
原発事故を取り巻く情勢ですが、国並びに東京電力から避難指示区域の見直しに伴う賠償額の基準が示されました。しかし、私たちが原発事故で受けた大きな心の傷を癒し、生活再建を図るために足り得るものではありません。避難指示区域の見直しについても、双葉町は従来のコミュニティーの維持と平等な賠償額の確保という観点から、町内全域を「帰還困難区域」に指定するよう国に要求しておりますが、未だに明確な回答が示されておりません。
 一方、中間貯臓施設については、8月19日、国、福島県と双葉地方8町村との協議で調査候補地が示されました。しかし、最終処分場が示されず、また、双葉地方に特化した復興再生計画が示されないまま納得できるものではありません。もっと議論を尽くさなければなりません。
 公開された東京電力テレビ会議の映像。刻々と迫る危機的状態が映し出される中で、住民の避難や放出された放射能を心配する声などは無く、最優先されるべき地域住民の安全が置き去りにされていたこともわかりました。東京電力には事故を起こした当事者として全てにおいて誠意ある対応を強く求めてまいります。
 平成24年9月1日
双葉町長 井戸川 克隆 」http://www.town.futaba.fukushima.jp/message/20120901.html/
苦悩がにじみ出ている。双葉町の人々の大変さをしっかり受け止める政治家はいないのか。