心の健康にABC理論を

受験生が、大学入試に携帯電話でカンニングした事件。受験生は山形県出身だった。
彼の高校は、コメディアンのケーシー高峰やミュージシャンの小林武史の出身校で、私は昔、弓道の交流試合で対戦したことがある。試合のあと、交流会で歓談したが、キャプテンがとても明るく率直な人で、好もしく思ったことを覚えている。
事件にかかわって知った顔が登場した。
《逮捕を受け、記者会見した相馬周一郎県教育長は「入試制度に対する信頼を損ねてしまった」と表情を硬くした》(河北新報4日)
あれ、高校の同級生だった相馬じゃないか。県の教育長なのか、偉くなったな。
もう一人。
早稲田大学で《法務担当の島田陽一理事は、複数の大学を舞台にしたウェブ上での「犯行」から「組織的、継続的に行われた可能性もある」と述べ、偽計業務妨害罪にあたるとの認識を示した》(毎日新聞、1日)
昔、島田君の自宅でしこたま飲んで泊り、夜中にゲーゲー吐いてご両親に迷惑をかけた記憶がある。
あの受験生は、ここまでの騒ぎになるとは思っていなかったろう。今後はカンニングを防ぐ仕組み作りをしっかりして、彼にもまたチャンスをあげたい。
先日の、自殺の話のつづき。
《「就職失敗」など自殺の「原因」とされる事柄が、そのまま自殺に直結するわけではない》と書いた。
「落ち込み」に対処するとても有効な技法があるので紹介したい。
論理療法(Rational Therapy)といい、その基礎になるのが「ABC理論」だ。
《多くの人が、あるマイナスの出来事(A、例えばリストラ、家庭の不和、失恋など)は必ず特定のマイナス感情(絶望やうつなど)という結果(C)をもたらすものだと考えていますが、そういう常識に反して論理療法は、あるマイナスの出来事(A)はその人の取り方・考え方・信念(B)によって、不健康なマイナス感情(この場合はうつ)か健康なマイナス感情(軽度の悲しみ、失望感、残念さなど)かという別の結果(C)をもたらす、と言います》(ポール・A・ホーク『きっと「うつ」は治る』の訳者あとがき)
AがCに直結するのではなく、BによってC(結果:Consequences)が大きく左右される。BとはBelief(信念)の頭文字で、要するに、感情は考え方でコントロールできるというのだ。
Bで避けるべき考え方としては、マスト化(MUSTurbation)がある。それは「ねばならない」、「〜して当然である」、「〜すべきである」という思い込み。
例えば、「私は立派に振舞わなければならない」「自分がやさしくしたらやさしさが返ってくるべきだ」「人々は私を公平に扱うべきだ」「私はいつも幸福でなければならない」などだ。
よく「誰もが幸福になる権利がある」などというのを聞くが、この一種だろう。自分の主観的な希望を絶対化している。
こういう考え方をしていると、そうでない事実に直面したとき、落ち込みがひどくなる。
では、どんなBを持ったら落ち込まずに済むのか。
簡単に言えば、世の中の実態を客観的に見るということだ。そうすると、うまくいけばいいんだけど、この世は、なかなか思い通りにはいかないものだ、という受け止め方になり、うつになったり自殺したりすることはなくなる。
すべて「こころ」次第。
自殺対策として、電話相談の強化や自殺名所の見回りなどがよく取り上げられるが、こうした「こころ」の健康こそ広められるべきではないか。
アルバート・エリス『どんなことがあっても自分をみじめにしないためには』参照)