米軍の残虐を告発する「冬の兵士」

takase222009-11-06

アメリカに「デモクラシー・ナウ」という独立系のテレビ局がある。
エイミー・グッドマンというおばさんキャスターが、アメリカの主流メディアが取上げないようなニュースをリベラル左派の立場から斬っていく番組をやっている。これを日本では朝日ニュースターが流している。
数ヶ月前、「冬の兵士」の集会を取り上げていた。http://asahi-newstar.com/program/democracy/onair/080702-006269.html
以下、番組解説から;
《2008年3月半ば、米国の首都ワシントンDC郊外にあるシルバースプリング市で、米国史上2度目の「冬の兵士」(Winter Soldier) 証言集会が開かれました。最初の「冬の兵士」集会は1971年にベトナム帰還兵によっておこなわれ、ベトナムにおける米軍の戦争犯罪を告発する証言を行いました。この伝統を受け継ぎ、今回はイラクアフガニスタンからの帰還兵数百人が、米軍による戦争犯罪の実態を告発しました。》
「冬の兵士」とは何か。
《「冬の兵士」とは、米国独立運動の思想家トーマス・ペインが、過酷な軍務を嫌って脱走した兵士たちを「夏の兵士」と呼んだことから名づけられました。「冬の兵士」たちは、自分達が戦争で犯した罪を告白し、戦争の恐ろしさを告発します。もともとは、1971年にベトナム帰還兵によって開かれた集会でした。今回はイラクアフガニスタン帰還兵によって米国で3月17日から3日間にわたって開かれました。》
ここでの帰還兵らの証言が実に生々しい。ユーチューブでぜひ見ていただきたい。アメリカのメディア事情の一端も知ることができうる。こんな番組がアメリカで流されていることにびっくりするだろう。http://WWW.youtube.com/watch?v=vv7zg7Q06hc
映像なので表情が見え迫真の証言となっている。何人もがほぼ同じような例を経験したと証言しており、信憑性は高いと思った。彼らの表情や口調からも演技は感じられない。これだけの数がそろうと、全員が示し合わせて嘘を言うのは不可能だろう。
いま、彼らの証言を聞くと、なぜアメリカがいずれの戦線でも勝利できずにいるのか、反米機運がますます高まっているのかがよく理解できる。
10月にはそのメンバーでイラク・アフガンからの帰還兵二人が来日して各地で証言した。
http://www.youtube.com/watch?v=XIbM_Fvoqjw
「冬の兵士」らが語るイラク、アフガンの戦場の実態を少し紹介したい。
彼らの証言に共通するのは、「交戦規定」が無視されていることだ。「交戦規定」には、敵対勢力と軍事目標しか攻撃してはならないと書かれているのだが・・・。
「住宅街で発砲されると、自分を守るためには、どこに敵がいるか確認しないまま撃ってしまう。自分の命を守るか、規定を守るか」
「銃撃があったが、どこから撃たれたか分からない。確認しないまま、民家にロケット弾をぶち込んだ」
「従軍記者がいると『交戦規定』どおりに行動するが、カメラがいなくなると規定は無視された」
「パトロールは午前3時ごろ。現地の民家のドアを蹴破り、女性も子どもも含め、寝ている人をたたき起こして縛り上げる。家捜ししてワイヤを持っているだけで怪しいと、テロリスト扱いしたこともある。破壊が終わったあとに、情報がまちがっていたという知らせが入るのは日常茶飯事だ。我々がうらまれて当然だ。」
「敵が見えない、すべてが敵に見える」
イスラム風の衣装のものは自動的に撃ってよいと司令官が言った」
「普通のスピードで米軍のそばを通りかかった車を、自爆テロ犯と思って撃って殺した。」
「10人テロリストを殺したと報告したが、みな民間人だった」
「モスクに向かって銃撃を命じられた。そこに敵がいる証拠もないのに」
モスクに銃撃する実写映像がある。http://WWW.youtube.com/watch?v=vv7zg7Q06hcこの6分50秒くらいから米軍がバリバリと機関砲でモスクの尖塔を撃つのだが、これは「うさばらし」だったという。さらにモスクに向けて砲撃するシーンでは米兵の歓声が上がる。私が観ても衝撃的な映像だが、イスラム教徒が見れば卒倒してしまうかもしれない。
「冬の兵士」たちは言う。
「米軍は撤退するしかない。米軍の存在そのものが問題」
敵を殺すより速いペースで敵を作っている
「一番大事なことは、社会の再建と秩序の復活を妨害している米軍を撤退させ、損害の補償をすること」
きょうのニュースで、アメリカの基地で、イラクアフガンに送られる予定の軍医が乱射事件を起こしたことを知った。この基地では帰還兵の精神障害に対処していたこと、この軍医がイラク・アフガン侵攻に強く反対しているとの情報しか入っていないが、米軍のテロ戦争の「病理」が噴出したと言えるかもしれない。
(私も一緒に仕事をしたことがある田保さんというジャーナリストが『冬の兵士』という映画を作った。写真はその1シーンからで、戦争に抗議する兵士たち。)