生命のご先祖はたった1匹の単細胞生物だった

 中国政府は11日、香港独立を支持する議員を失格させる方針を発表。その直後、香港政府は民主派議員4人の資格剥奪を決定した。これを受けて、民主派議員15人が抗議辞任を表明した。

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抗議辞職を発表した民主派議員たち

 《民主党の胡志偉主席は会見で、「香港に今も『一国二制度』がまだあるとは、世界に言えない。今回のことが一国二制度の)正式な死亡宣告だ」と述べた。》(BBC)
 全人代常務委の決定は
 〇香港に対する中国の主権行使を拒否する
 〇香港独立の宣伝
 〇海外勢力に干渉を求める
 〇国家安全に危害を与える
 〇香港基本法と香港政府に忠節を尽くさない―などの行為があった場合、直ちに議員資格を失うというものだが、具体的に何の行動が失格要件なのかは明示されず、当局の判断一つだ。
 民主派の議員辞職の結果、立法会定数70のうち、以前からの欠員8を加えて3分の1超が欠員となり、残りはほとんどが親中派で、議会の機能は期待できなくなる。民主化運動の展望はますます見えなくなった。
 中国はもうやりたい放題。香港は単なる中国の一都市に限りなく近づいていく。
 
 興味深いことに、日本共産党は『赤旗』の「主張」で習近平の名をあげて激しく中国を非難、「共産党」の名に値しない!とバッサリ切り捨てた。

www.jcp.or.jp

 《香港の「一国二制度」をさらに形骸化させる暴挙です。選挙で選ばれた住民代表の地位を、中国の中央機関と香港政府が一方的に奪う行為は内外から厳しい批判を浴びています。強権を行使して自由と民主主義を踏みにじるのは、社会主義とまったく無縁な行動です。直ちに撤回することを要求します。(略)
 中国は資格剥奪に関する決定を「一国二制度を貫徹させるため」としています。まったく成り立たない言い分です。
 香港の地位を定めた香港基本法立法権をはじめ高度な自治を明記しています。議員資格の剥奪は基本法に真っ向から反しています。(略)
 中国の習近平政権は今世紀半ばまでに「社会主義現代化強国」を建設することを国家目標に掲げます。社会主義は「国民が主人公」という民主主義の理念を政治、経済や社会全体にわたって現実のものとした社会です。中国が香港で行っていることは社会主義とまったく相いれず、「共産党」の名に値しません。このまま経済力で他国を上回る「強国」になったとしても中国は国際的に信頼される国にはなれません。世界が香港を注視していることを中国指導部は自覚すべきです。》

 日本で、右も左も中国の人権侵害について批判しているのは結構なのだが(自民党には二階氏のような親中派がいるが)、日本政府は中国に対してはいつも「懸念する」、「憂慮する」どまりで「抗議する」までも言わない。少なくとも日本共産党なみの強い姿勢を示すべきだ。
・・・・・・・・・・
 さて、「玉川上水46億年を歩く」プレウォークの地球史解説。
 10月31日、第2区(武蔵砂川駅鷹の台駅、6.2km)を歩いた。

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玉川上水の水辺に降りられる数少ない場所が玉川上水駅の近くにある

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歩いている途中で見かけた「ヘクソカズラ」。ひどい名前を付けたものだ。

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ホトトギスが咲いていた

 きょう歩くのは、ざっと36億年前くらいから28億年前くらいまで。

 地球についに命が創発した。
 どこで最初に生命が生れたのか、今も議論があるが、海の深いところというのが有力だ。
 きょうのプレウォークのゴールあたりで、光合成を始める生物が出てくる。光合成は、地球の生命史の大革命で次回お話するが、今はいわば革命前夜ということになる。

 きょうは、命が創発したことがどんな意味を持っているかを考えたい。

 先日、国勢調査があって住所や姓名を書かされたが、宇宙における私たちの住所はどうなるか。
 「おとめ座銀河団」の「アンドロメダ局部銀河群」の「天の川銀河」の「オリオン腕」の「太陽系」の第3惑星、ということになる。
 私たちは、宇宙のただ中にいる「宇宙人」で、地球に生命が生まれたということは、宇宙に生命が生まれたということだ。生命史も宇宙史の中に位置づけけ考えていきたい。

 前回のおさらいだが、宇宙は138億年前に極微の1点からビッグバンで生れた。
 超高温のエネルギーが冷えてくると、最初の物質として素粒子ができ、ついで水素原子が、さらに星が形成されて内部で多様な元素ができ、超新星爆発という星の死でさらにたくさんの元素が生れて宇宙空間に散らばった。宇宙のエネルギーは自らを高度化、複雑化していった。
 多様な元素からなる、祝福された星として生れた地球上でも、原子は結びついて分子に、分子は高分子にと、物質の高度化、複雑化は進行した。その複雑化の結果として生まれたのが生命だ。40億年ほど前のこととされる。

 宇宙の高度化、複雑化のプロセスは、生命の世界をも貫き、生命はどんどん進化して高度化、複雑化し、いまや地球上は人類を含む1000万種とも2000万種ともいわれる多様な生命であふれている。

 ここにヘッケルやダーウィンのものを含め、生命の系統樹がいくつかある。

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ヘッケルの系統樹

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ダーウィン系統樹

 問題はこの根っこのところ、生命の「ご先祖」だ。
 
 近年のDNA研究の進歩はすさまじく、次々に新たな発見がなされているが、最新の研究によると、生命の「共通祖先」、私たち生き物のご先祖は、いろんな場所で多発したのではなく、あるとき、ある特定の場所で生まれた1匹の単細胞生物だったという。

 これを知った時、感動した。
 地球に生きる生き物たちのご先祖がたった1匹で、生き物すべてがそこから進化したとすれば、みんな親戚ということになる。
 ヒトも、そこに咲いてる花も、動物園のパンダも、ゴキブリもみな親戚だ。つまり、生命は一つなのだ。

 さらに言うと、宇宙は138億年前に小さな小さな一点から膨張して現在の巨大な宇宙になったが、小さい風船を膨らませていくら大きくなっても一つであるように、宇宙も一つである。
 宇宙は一つ、生命も一つ、人類も一つ。
 私たち一人ひとりの命も宇宙史の進化の中に位置づけると、また違った風景が見えてくるのではないか。

祝福された星、地球の誕生

口だけでコロナ退治が出来りゃ楽 (奈良県 八郷博 朝日川柳14日)

 

 新規コロナ感染者が急増し、「第3波」襲来といわれている。

 この期に及んで、政府も都も、みなさんに気をひきしめて警戒してほしいと「お願い」するばかり。さらには、このかん(国民の)気が緩んでいると言った知事もいた。

 のけぞったのは赤羽国交大臣の13日の会見。
 来年1月末までとしている「GoToトラベル」の期間を2月以降、さらに延長すると言ったのだ。

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TBSより

 「地方の経済の状況を見ますと、(GoToを)延長したいというふうに思っています」。
 北海道からはGOTOトラベルは控えて!との声が上がるなかのこの発言。気が緩んでいるのはどっちだ?
 冬にかけて感染の拡大が懸念されることについては、「国民はそうしたことを賢明に判断しながら利用していると思う」と語った。
 責任を全部われわれ国民に放り投げるつもりだな。

 『モーニングショー』でコメンテーターの吉永みち子氏が、国民任せにするのではなく、行政は具体的な方針を示してほしいと苦言を呈していたが、そのとおり。
 政府は、感染急拡大に対して、かくかくの現状認識をしており、これこれの方針で望むので協力してほしいと明確に示すべきだ。

 先日友人が、自分が接触した人がコロナ陽性と判明したので、他の人に移してはならないと、PCR検査を受けた。結果は陰性で胸をなでおろしたが、自費なので3万3千円かったという。4万円のところもあり、こんな高額ではおいそれと受けられない。

 韓国ソウルでは6月から12月まで市民なら誰でもPCR検査を無料で受けられる。日本でも上の友人のケースやエッセンシャルワーカーなどの検査くらいは無料にできないものか。以前からの懸案だが、一向に改善されていない。

 感染が増えて困りましたねえ・・とまるで自然現象を見るような政府、地方自治体の無責任な態度には憤りをおぼえる。

 それに、冬に大流行する可能性に備えて体制を準備すべきだと早くから指摘されてきたのに、なにもやっていなかったようで、すぐに医療体制がひっぱくしそうで心配だ。

 無策と言われても仕方がないだろう。

 すぐに具体的な対応策と今後の方針を明らかにしてほしい。
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 東京ビエンナーレ玉川上水46億年を歩く」の2回目のプレウォークが進行中だ。これは玉川上水の46kmを地球史46憶念に重ね合わせて歩き、人類の「位置」を考えようというものだ。

tb2020.jp


 (プレウォークの1回目は今年はじめに行われた)

takase.hatenablog.jp

 きょうは第3区(鷹の台駅から三鷹駅まで)9.6kmを歩いた。

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からりと晴れ、気持ちのよい日だった 玉川上水に沿った遊歩道を歩く

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誰が置いたか、いろんなドングリが・・

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センニンソウ。綿毛が仙人の髭に似ているところから命名されたという

 毎回、昼食後に、地球史の解説をさせていただいている。記録として、ここに載せておこう。

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 まずは10月18日、第1区(羽村取水口~武蔵砂川駅、9.6km)の解説。ここは46億年前から36億年前くらいに当たる。

 

 およそ46億年前、太陽系第3惑星として地球が生れた。

 太陽系の8つの惑星のなかで地球はどんな星か。

 「水の惑星」とよく言われるが、実は地球は宇宙のなかでも水が少ない場所だ。
 地球の表面の7割を海が占めるから多いように見える。しかし、海の平均水深は3700m(3.7km)ほど。地球の半径は6400kmあるから海は半径の1000分の1もない。リンゴの皮よりずっと薄い。水は地球の質量のわずか0.02%しかない。

 ただし、地球の水には決定的に重要な特徴がある。それは水が「液体で存在する」ということだ。生命は海で生まれ進化した。水が液体であったからこそ生命の誕生が可能になったのだ。ただ、水が液体のままでいられるのはごく限られた条件の下でである。
 水は0℃から100℃の間で液体でいられる。しかしこれは1気圧のもとでという条件だ。気圧の低い富士山の頂上でお湯を沸かせば87℃で沸騰する。気圧がさらに低くなれば沸点はもっと下がる。宇宙空間は事実上圧力ゼロだから水は液体でいられない。0℃より少しでも下なら氷(固体)、少しでも高ければ水蒸気(気体)になる。液体の水を持つことは容易ではない。絶妙な気圧、温度が保たれたからこそ、地球が「液体の水の惑星」となることができた。

 実は地球は「鉄の惑星」だ。鉄は、地球の質量の3分の1を占める。そのことが生命に大きな幸運をもたらした。
 鉄は地球の奥深くに大量に存在する。外核では、高温でどろどろの状態の鉄がぐるぐる回っている。鉄の回転で電気がおき、地球は大きな磁石になった。磁場が形成され、地球をすっぽり覆った。それが、生命には非常に危険な二つのもの、宇宙線太陽風をブロックして地球を生命フレンドリーな環境にしてくれている。
 それだけではない。鉄は生物の内部でも命を支えてくれている。血液はどうして赤いのか。ヘモグロビンの鉄と酸素が結合した赤サビの色だ。鉄は酸素を体の隅々の細胞まで届ける役割を果たしている。光合成、窒素固定にも鉄が必要で、鉄は動物、植物の基本的な生命維持システムにとって必須の元素である。

 私たちの体を構成する元素のうち、水素、炭素、窒素、酸素で体重の96%を成しているが、それらはどうやってできたのだろうか。父や母がいるように、地球にも誕生の前史がある。地球がどのように生まれてきたのかを見てみよう。

 そもそも地球を構成するさまざまな物質はどうやってできたのか。
 宇宙は138億年前、極微の一点からインフレーション、ビッグバンを経て急膨張してきた。はじめ宇宙は超高温のエネルギーであり、物質というものはなかった。宇宙が拡大し冷えるにしたがってまずは素粒子ができた。ビッグバンから38万年後、陽子が電子をつかまえて水素原子(一部ヘリウム原子)ができ、大量の水素原子が重力で互いに引き寄せ合い集まって星となって輝きだした。
 星の中では膨大な熱と圧で核融合が行われ、水素からヘリウム、リチウム、ベリリウム(水兵リーベ僕の船・・)さらに原子番号6の炭素、7の窒素、8の酸素ができ、原子番号26の鉄までの元素が作られた。そこでいったん元素の製造は止まる。
 巨大な星が燃えつきて死ぬ。そのとき星は超新星爆発を起こし、その膨大な熱と圧のにより、さらに新しい元素、人間にとって必須微量元素の原子番号27コバルト、29銅、30亜鉛、34セレン、42モリブデン、53ヨウ素その他の元素が創発した。

 太陽系は超新星爆発で飛び散った塵やガスから作られた。そのため、地球は原子番号92のウラニウムまでの多様な物質からなる複雑な星として生まれることができた。

 地球も、また私たちの体も、星によって作られた。私たちは星の子である。

 こうして、さまざまな僥倖に恵まれて、生命が生まれる絶妙な条件が整えられて地球は生まれた。地球の誕生はとても祝福されたものだったのだ。

アメリカでよみがえる「社会主義」3

 人類は幸福になっているのか、それとも不幸になっているのか。

    ベストセラーになっているロスリング『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』(日経BP)は、「世界はよくなっている」ことをアピールしている。
 この種の本には、ヨハン・ノルベリ『進歩~人類の未来が明るい10の理由』(晶文社)もある。同じように多くの統計を使いながら、世界の子どものワクチン接種率はすでに高いし、識字率は急速に上がっているし、貧困率は下がっている、全体としてかなり速いスピードで世界はマシになっているという。

 これをどう解釈するかはいずれ書いてみたいが、先進国では、現代史で初めて、親の世代より子どもの世代が貧困化する時代に突入したという。アメリカでの若者の急激な左傾化と右の熱狂的なトランプ支持は、危機の表現と解釈できる。

 というのは、トランプ支持層の中核とされるのが、新自由主義のもとでのグローバルな競争によって失業や賃下げなどの不利益を被った白人たちで、激しく敵対し憎悪しあう民主党極左とトランプ支持の極右はともに「負け組」同士だからだ。
 「もうこんな社会ではやってられない!」という悲鳴が、既成の秩序を拒否し、左右への分極化を招いているのだろう。

 さて、きのう紹介したアメリカ最大の社会主義政党DSA(アメリカ民主社会主義者)について調べてみたら、思ったより影響力のある組織のようだ。

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DSAのロゴ。赤いバラに、肌の色が違う二人の握手する手

 「2016年に6500人だったメンバーが2018年には5万人に増え」たときのうブログに書いたが、今年10月時点では7万5千人を超えていた。たった4年で10倍超というすごい増え方だ

 またDSA(アメリカ民主社会主義者)は2018年、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏を民主党から下院(任期2年)に送ったが、実はもう一人の活動家も当選していた。この二人はともに今回、大統領選挙とともに実施された下院議員選挙で再選を果たし、さらに新たに2人のメンバーが当選確実になっている。
 下院選挙では大統領選挙と同じく、まず党内で候補者を選ぶ予備選挙があり、実力のある現職議員が多い都市部から民主党候補として出馬するにはかなり高いハードルがある。4名も連邦議会に送り込むとは大したものである。

 アメリカの若者がめざす「社会主義」とはどんなものなのか。
 DSAはホームページによると、「働く人々が経済と市民社会の両方を運営する」分権型の社会を目標とし、中央集権的な「共産主義」には断固反対している
 そして、「少数者ではなく大衆の利益に合致する民主主義」のためには「政府および経済構造のラディカルな改革」が必要だとしつつ、当面の政策として、全国民向けの健康保険制度の確立、人種・性・宗教などのあらゆる差別の撤廃、気候危機に対する抜本的な対策、最低賃金の大幅アップ、富裕層への増税、反ファシズムなどを掲げている。グリーンニューディールも支持しており、この点、バイデンの構想に親近性がある。

 DSAは民主党に浸透して内部から変えていく戦術を採っているので、バイデン政権の諸政策、とくに気候と人権、福祉については左傾化する可能性がある。そこで、中道派が激減した構図のなかで左右の激しい主導権争いが予想される。

 「社会主義者」の存在を念頭において今後のアメリカ政治を見ていきたい。
(つづく)

 

 以下、沖縄写真展「琉球弧」から。

 

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山田實《壺屋のこどもたち 那覇》1965年

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山田實《祭りの日 糸満市真栄里》1968年

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比嘉康雄《本土集団就職 那覇港》1970年 返還2年前。孫を見送っているのか。この表情がいろんなことを想像させる。

 

アメリカでよみがえる「社会主義」2

 立冬になり、東北からも初雪の便りが届く時節になった。
 先月、実家の冬囲いをシルバーボランティアに依頼したので、そろそろ作業してくれているだろう。

 山形では芋煮会シーズンだが、今年はコロナでドライブスルーでやったりしているとのニュースも。
 芋煮会山形県村山地方の発祥らしく、江戸時代は里芋に棒鱈とザッコ(雑魚)を煮ていたという。河原でやることが定着したのが明治になってから。牛肉を入れるようになったのは昭和初期とかなり早い。「牛肉入りで河原で」やるのが正統派ということのようだ。こんなことを書いていたら食べたくなってきた。

 関東でも山の木の葉が色づいている。どこかに紅葉狩りに行こうか。

 7日から初候「山椿開(つばき、はじめてひらく)。つばきと読むが実際は山茶花(さざんか)。童謡「たき火」のさざんか、さざんか、咲いた道の歌詞が思い浮かぶ。
 12日から次候「地始凍」(ち、はじめてこおる)。霜柱はまだ先だろう。
 末候「金盞香」(きんせんか、さく)が17日から。金盞はここでは水仙のこと。
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 おとといの「社会主義」の話の続き。

 アメリカ社会の分断・両極化が激しく進んで、いわゆる中間派が少なくなっているという。
 ビューリサーチセンターのアメリカのイデオロギー変遷調査グラフでは一目瞭然。

www.pewresearch.org

 

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民主党支持者(青)と共和党支持者(赤)の両極化が激しく進んでいる。縦線はそれぞれの中央値。

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こちらは毎日新聞のグラフ

 民主党共和党それぞれの支持者の分極化の激しさは私たちの想像を超える。これを見ると、あの選挙戦で見せた双方の支持者の敵意の強さも納得できるというものだ。
 次期リーダーのバイデン、ハリスは国民の「融和」を前面にかかげるが、大変だぞ、これは。

 アメリカ国民の分断は、共和党支持者の右傾化をトランプが煽ったからだ、と考える人が日本では多いと思うが、グラフをよく見ると、むしろ民主党支持者の左傾化がはなはだしいことがわかる。背景には若者の「社会主義」への支持が急増していることがある。

 いま変動の中核は、ミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)とZ世代(1990年代後半~2000年以降生まれ)ソ連という国家が存在したときには生れていなかった人たちだ。そんな若者に変化が起きていることを示すデータがたくさんある。

 2年前、ニューヨーク州民主党から出馬したアレクサンドリア・オカシオ=コルテスが大番狂わせで勝利、史上最年少の女性下院議員となった。

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wikipedia より 現在31歳

 彼女の出身母体はDSA(アメリカ民主社会主義者という左翼団体で、その勢力が急拡大している。
 2016年に6500人だったメンバーが2018年には5万人に増え、その平均年齢は2013年の68歳から、2017年にはなんと33歳まで若返っている。(斎藤幸平「ジェネレーション・レフト宣言」『世界』11月号から引用)
 社会的には超少数派だった高齢者のオールド左翼に替わって、若者がどっと加入して一気に主流になったわけだ。

 「米外交問題評議会」(CFR)というシンクタンクが発行する『フォーリン・アフェアーズ・リポート』は、アメリカだけでなく世界的にも影響力のある国際政治経済ジャーナルだが、今年のNo1号の巻頭論文は「【ポスト資本主義は社会主義ではない】資本主義の衝突~『民衆の資本主義』か『金権エリート資本主義』か」だった。

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 この論文はあとで紹介するが、これから資本主義はどうなっていくのかという本格的な議論が政治エリートのなかでもなされるほど、危機感が募っているわけである。

 以上の変化はアメリカだけの問題にとどまらず、世界の、そして日本の今後を考える上でも重要だと私は思っている。世界をがらりと変えるかもしれない。

 30年前、ソ連・東欧のいわゆる「共産圏」の崩壊で、社会主義にはもう当分は希望がないと思った。もちろんソ連圏や中国が「社会主義」の名に値しないトンデモ体制で、否定されなければならないとは思っていたが、90年代以降、世界ではイデオロギー的には社会主義は影をひそめ、アカデミズムでも「マル経」など化石扱いされるようになっている。
 アメリカの動きに、元左翼の私としては、おいおいちょっと待てよ、何が起きているんだ、と身を乗り出したくなる。

 実は、社会主義の「復権」はアメリカだけではない。欧州でも大きなトレンドになっている。日本はこの波から完全に取り残されているが、とりあえず学びを進めよう。
(つづく)

映画SAWADAが24年振りに上映

 東京都写真美術館で、『SAWADA 青森からベトナムへ ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死』(五十嵐匠監督)という映画を観てきた。

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 若い人は沢田の名前を聞いても知らないだろうが、日本を代表する世界的な戦場カメラマン(本人はこう呼ばれるのを嫌がったそうだが)で、インドシナの戦乱を最前線で取材し、1970年10月28日にカンボジアで銃撃され亡くなった。34歳という若さだった。

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 (沢田教一については以前ブログで書いた)

takase.hatenablog.jp

 今回は、没後50年企画で「24年振りに35mmフィルムでの貴重な上映」だそうだ。

 この映画製作には以前私が所属していた「日本電波ニュース社」も協力しており、監督の五十嵐さんとは、映画制作の前に会社にいらしたときにお会いした記憶がある。
 映画は四半世紀前に観ているはずなのだが、すっかり記憶が飛んでいて初見も同様、新鮮だった。
 沢田をよく知る多くのジャーナリストに取材して思い出を語らせており、歴史的にも貴重な記録になっている。映画製作でこれが一番大変だったと五十嵐監督が語っている。
 「取材の時点で、沢田さんが亡くなって20年以上が経っていたんですけど、みんなまだ現役バリバリのジャーナリストで活躍していた。当時はメールもSNSもない。通信手段はファックス、電話、手紙で打診するしかない。でも、世界中を飛び回っているからつかまらない、つかまらない。
 その上、こちらの主旨がなかなか本人まで届かず、取り合ってもらえなかったり、電話しても居留守使われたり(苦笑)。」
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizukamikenji/20201104-00206232/UPI

 沢田教一は、UPIプノンペン支局長フランク・フロッシュとともに危険とされる国道2号線へと向かい、プノンペンの南約34キロ地点で何者かに襲撃され死亡した。

 映画の最後の方に伝説の女性ジャーナリストで当時UPIの同僚だった、ケイト・ウェブ(Kate Webb)が登場した。ベトナム戦争で初の女性ジャーナリストで、紅一点で注目されたことだろう。写真で見ると凛々しく美しい。大酒飲みでヘビースモーカーでも知られていたらしいが。

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ケイト・ウェブ著「On the other side」

 沢田は無謀だったから死んだと評する別のジャーナリストに反論するように、タバコを手に、彼が不注意だったなんていえない、何が起きるか分からないのが戦場だと語っていた。考え考え、特別な思い入れをもった話しぶりが印象に残る。

 ケイト・ウェブは、ニュージランド生まれオーストラリア国籍のジャーナリストで、インドシナのあとは湾岸戦争東チモール、アフガン、香港返還など数々の大きなニュースの現場に立った。

 彼女に憧れてジャーナリズムの世界に入った女性は多い。
 フィリピンの2月革命(1986年)を取材したというから、当時、私もどこかですれ違っていたかもしれない。

 ケイト・ウェブを一躍有名にしたのが、沢田が殺された半年後、1971年4月にプノンペン郊外で武装勢力に捕らわれ、絶望視されながら、23日後に姿を現した事件だった。ニューヨークタイムズは死亡記事を載せたほどだった。一緒に捕まったのが日本電波ニュース社の鈴木利一さんで、私のかつての上司にあたる。

 私が鈴木さんから聞いた話では、彼らを捕えたのはカンボジア解放勢力(のちにポルポト派と呼ばれることになる)の兵士で、そのままなら殺されるところだったが、その地区に共同作戦のために展開していた北ベトナム軍が介入して解放されたという事情だったと記憶している。

takase.hatenablog.jp

 ケイト・ウェブは2007年に亡くなっている。彼女のWikipediaでは「北ベトナム軍に捕らえられた」ことになっているが、こんど彼女の本「On the other side- 23 days with the Viet Cong」(このタイトルでは捕まえたのが「ベトコン」になっているが)を読んでみよう。

 映画を観ながら、戦場にあったさまざまな青春を想像し、戦争取材の意味を考えさせられた。
 映画は15日(日)まで。
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 同じ写真美術館の3階で、沖縄の写真家の琉球弧」という写真展を観た。
 米軍、基地、ネオン街なども被写体になっているが、写真が暗くない。地に根を張ったたくましい生活を感じる。

http://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3838.ht

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山田實《休日を楽しむ 弁ケ岳 首里》1963年

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山田實《髪結い 那覇市櫻坂にて》1950-1959年

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山田實《安謝橋 那覇》1972年 橋が選挙ポスターで覆いつくされている

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山田實《共同洗場 金武》1959年 

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山田實《拝む親子 弁ヶ岳 首里》1963年 肉親の誰かがこの土地に埋められているのか・・

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山田實《給食時間 与根 豊見城》1968年

 沖縄の写真は明日も紹介します。

アメリカでよみがえる「社会主義」

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銀杏の臭いが秋の深まりを知らせてくれる。近くの神社(鈴木稲荷)で今年も銀杏を分けてもらった(100円)

 きのうは母親の91歳の誕生日だった。
 昭和4年生れ。西暦にすると1929年。世界恐慌が始まった年だ。
 このごろは会うたびに、昔の話を聞き出している。母の子ども時代や戦争中の話などはこれまであまり聞く機会がなかったので新鮮だ。現代とはまるっきり別世界である。

 この年代の日本人は、20万年のホモサピエンス史上、もっとも激しい世の中の変化を体験したのではないかと思う。ごくろうさまでした。
・・・・・・・・
 アメリカ大統領選。ようやくバイデン勝利が確定してほっとした。

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バイデン勝利の報にわくニューヨーク市

 バイデンそして副大統領となるハリス、ともにいい勝利宣言だった。アメリカは癒されなければならないとのバイデンの言葉に、この4年がいかにアメリカ国民を傷つけたかが示されている。

 ハリスは、黒人の下院議員だったジョー・ルイスの"Democracy is not a state. It is an act."(民主主義は状態ではなく行動だ)を引いて、だからアメリカの民主主義は保証されたものではなく、そのために闘う意思が大事だと訴えた。

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カマラ・ハリス次期副大統領

 堂々と理念や信条を謳いあげる二人の姿を見て、原稿なしには何もしゃべれないわが国のリーダーたちに少しは見習ってほしいと思うのは私だけでしょうか。

 各国首脳からのお祝いがあいつぐなか、フランス・パリのイダルゴ市長はツイッター「お帰りなさい、米国」と投稿し、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」への米国の復帰を期待したと報じられている。
 また、コロナ対策を放棄したトランプのWHO脱退をバイデンは撤回すると約束している。世界最悪のコロナ蔓延という悲惨からの脱却には、国際協調が不可欠だ。
 さらにオバマ・バイデン時代にまとめあげた「イラン核合意」にも復帰するだろう。
 国際的な合意の枠組みを実効あるものにするには、残念ながら、アメリカという国の存在が必須というのが現実だ。トランプがあと4年大統領をやるとなっていたら、国際協調にはとりかえしのつかないダメージを与えていただろう。

 ただし、バイデンには困難な後始末も控えている。
 今世紀のアメリカの巨大な過ちとして歴史に記録されるだろうアフガンとイラクへの侵攻。いま、二国とも戦後復興どころかその前提の治安が維持できない惨状を呈している。アメリカには、ベトナム戦争以上の長期にわたる戦乱の責任をとってもらわないといけない。
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 とりあえずバイデン勝利でよかった、と安堵する一方で、トランプが投票総数の半数近い7100万票台を集め、前回より800万票も上積みしている事実にとまどってしまう。

 今回の選挙が、トランプVSバイデンではなく、トランプVS反トランプだったのは明らかだ。バイデンは民主党内で熱狂的な支持を得ていたわけではなく、反トランプのために幅広い層が妥協できる、いわば「最大公約数」というか、無難な候補として選ばれた。
 この構図と結果から見ると「トランプ的なもの」を熱心に支持する人々は減っておらず、むしろ増えている。「トランプ的なもの」への支持は、この4年の間に、キワモノの臭いのするものから一般市民に浸透したようにみえる。共和党自体、穏健派がごそっと抜けて「トランプ党」になったと言われる。

 これをもたらしたのは多くの人が指摘するように、新自由主義のもとでの一層のグローバリゼーションだろう。 

 いまや資本に国籍はなく、アメリカの労働者と中国の労働者が直接に賃金水準と効率で比較され、有利な方に投資が向かうという、仁義なきグローバルな競争になっている。「輸入品に高い関税をかけて、海外に出ていった工場を米国内に引き戻せ!」という主張に賛成するのはある意味自然な選択に思える。

 格差が拡大し、身分が不安定化する多くの人々の悲鳴が“USA! USA!”の呼号となり、"We love Trump”とトランプ支持へと向かったのだろう。

 しかし、その一方で、アメリカの若い層に「社会主義」をめざす人々が急増しているというとても興味深い現象がある

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斎藤幸平『人新生の資本論』P123より

 18歳から29歳の層では、なんと資本主義より社会主義に好感を寄せているというのだ。これは驚きである。
 トランプが懸命に「バイデンは社会主義をやろうとしている」と攻撃しているのは、アメリカ国民の社会主義アレルギーに訴えていたわけだが、それが通用しない新人類が出てきているらしい。

 そういえば、民主党の大統領候補者争いでは「民主社会主義者」を自称するバーニー・サンダースが、2016年のクリントン、今回のバイデンを脅かした。彼は、国民皆保険制度や大学の学費無料化、富裕層への増税最低賃金の引き上げなどを公約に掲げて、若い層の圧倒的支持を集めたのだった。

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バーニー・サンダース

 社会主義を支持する若者たちもまた、新自由主義グローバリズムで将来に希望を持てなくなっている点で、トランプ支持の人々と共通するものがあるのではないか。

 なぜいま「社会主義」が人気なのか。その中身は何か。まさかかつてのソ連、中国のモデルではないだろう。
 いまアメリカでよみがえる「社会主義」について考えてみたいと思う。

(つづく)

トランプ会見中継を打ち切るメディアの気骨

 きょうは立冬で、暦の上では冬のはじまりだが、沖縄の西表島では30度を超す真夏日だったという。日本は広いな。

 午後から畑作業をして、いつものようにどっさり野菜を持ち帰った。

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 カブはぬか漬けにしよう。ぬか漬けは数年前、生協のぬか床パックではじめ、今も続いている。
 先月、ぬか床が急に変な臭いがして不味くなった。ネットで調べて、塩を足したり、トウガラシや昆布を入れたりしても改善しない。新たにぬかを買ってきて、半分入れ替えたらようやく良くなった。ぬか床も、人間の思うようにならない小さな「自然」である。
 人参の葉はふりかけにするとよいと聞き、こないだやってみたら、これがうまかった。作り方は簡単で、キッチンペーパーの上に適量の人参の葉をおいてレンジでチン。水気がとれてカラカラになったらもみほぐし、ゴマと塩を加えておしまい。ごはんにかけて食べるととても香ばしい。おすすめです。

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畑の小菊がきれいに咲いていた

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 トランプ大統領が現地時間11月5日、ホワイトハウスで記者会見を開いて、郵便投票で不正が行われていると根拠のない陰謀論を繰り返し「民主党が選挙を盗もうとしている」と一方的に主張した。

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NBCの中継

 テレビでライブで見ていたが、疲れた表情で、いつもと違って声に張りがなく、ひんぱんに原稿に目を落とす。十数分で質問を受け付けずに立ち去った。

 さすがのトランプも「終わり」と思わせる会見だったが、驚いたのはアメリカのメディアの対応だ。テレビ局が会見中継を途中でやめてしまったのだ!

 《ABCやNBCなど米主要テレビ局は、5日にトランプ大統領ホワイトハウスで開いた記者会見の中継を打ち切った。全米が注目する大統領選で、再選を目指す現職が国民に直接語り掛けるのを途中で遮るのは異例の対応。トランプ氏が根拠のない選挙不正を主張したことから事実関係の検証を優先させた。(略)
 一方、政権に批判的なCNNや政権寄りのFOXは会見を中断せず放送した。ただ、CNNは「トランプ氏が何の証拠もなく不正主張」とのテロップを表示した》(時事)

 CBSも中継を打ち切ったという。(AP)

 《NBCは、会見途中で画面を切り替え、キャスターのレスター・ホルト氏が「大統領が不正な投票があったという考えを含め、多くの虚偽の発言をしたため、ここで中断しなければなりません」と発言。「(不正が行われたとする)証拠はありません」と視聴者に注意を促した。》
 《CNNのキャスターを務めるアンダーソン・クーパー氏は、会見後に「これが米国の大統領です。世界で最も強力な人物である彼は、暑い太陽の下でじたばたしている肥えたカメのように見えました」と痛烈に批判。「彼はただこの状況を受け入れられず、この国を含めて、すべての人を道連れにして壊したいのでしょう」と述べた。》(huffingtonpost)

 「報道の自由」。さすがだ。この姿勢には尊敬の念を抱く。
 こういうところがアメリカの強さを下支えしているのだな。
 日本のメディアはとても真似できないだろう。この事例はマスコミ各社で社内研修に使ったらどうか。

 トランプの常軌を逸した悪あがきは、共和党内でも顰蹙を買っているようだが、そんななか、2008年の大統領選でオバマに敗北した共和党ジョン・マケインの敗北宣言が話題になっているという。

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2008年、敗北宣言するジョン・マケイン

 オバマの勝利確実が伝えられたあと、マケインは地元アリゾナ州で支援者を前に敗北を宣言。オバマに電話で祝福したとの発言にブーイングが巻き起こったが、マケインは両手を挙げて「please(お願いですからやめてください)」と制しスピーチを続けた。

 10分の演説の動画を観た。ステイツマンシップ(statesmanship)とはこれかと感動した。その一部を紹介したい。

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 オバマ氏は、彼自身と彼の国のために素晴らしいことを成し遂げました。

 私は彼に拍手を送り、この日を迎えることができなかった彼の最愛の祖母に、心からお見舞いを申し上げます。彼女は創造主の前で安らかに眠り、彼女が育てた素晴らしい男性のことをとても誇りに思っているでしょう。

 オバマ氏と私は違う考えを持ち、議論を交わしてきました。そして、彼は勝利しました。私たちの意見の違いは、今後も残り続けることは間違いありません。私たちの国は困難を迎えています。私は今夜、この国が直面する多くの課題と向き合う私たちを、先頭にたって率いるオバマ氏を助けるため、全力を尽くすことを誓います。

 私を支えてくれたすべてのアメリカ国民に、お願いしたいことがあります。オバマ氏を祝福するだけでなく、この国の繁栄のために次の大統領に善意を送り、共に集い、必要な妥協点を探し、異なる意見を持ちながらも譲り合い、協力する努力をしてください。この危険な世界で国の安全を守り、より強く、より良い国を私たちの子どもや孫たちに受け継ぐために。

 どんな違いがあろうとも、私たちは皆アメリカ人です。そして、私にとっては、この共通点ほど重要なことはありません。お願いですから、そのことを信じてください。

 皆さんが今夜、落胆したのは当然のことです。しかし、明日にはそれを乗り越えて、国を再び動かすために協力しなければなりません。私たちは戦いました。私たちは、一生懸命に力を尽くして戦ったのです。

 そして、私たちの力は及びませんでしたが、失敗したのは私です。あなたではありません。・・・・

 

 原稿なしで誠実に、かつ情熱を込め、落胆する支持者に噛んで含めるように説得している。
 ちょっとウルっとくるほどすばらしい。こちらは日本の政治家に学んでもらいたい。
 以下に全文と動画が載っているので、関心のある方はどうぞ。
Https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5fa4df3ac5b64c88d3fefa17
 
 マケインは共和党穏健派として政治的にトランプに対抗していたが、人間的にも不信感を持っていたようで、一昨年、死期が迫る中、自分の葬儀にはトランプ大統領を参列させないと表明していた。
https://jp.reuters.com/article/usa-mccain-0824-idJPKCN1L9211

 マケインのような気骨ある共和党員がトランプの醜態と闘ってくれるのを期待しよう。